インテル 社長兼CEOのポール・オッテリーニ氏。チップベンダーからソリューションベンダーへの変革を唱えた
インテル 社長兼CEOのポール・オッテリーニ氏。チップベンダーからソリューションベンダーへの変革を唱えた
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ソリューションベンダーとして必要となるソフトやサービスの領域、とりわけ携帯機器向けの分野を強化するためウインドリバーを買収したとする
ソリューションベンダーとして必要となるソフトやサービスの領域、とりわけ携帯機器向けの分野を強化するためウインドリバーを買収したとする
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買収したマカフィーのソフトウエア技術とvProの組み合わせにより、広範なスマートデバイスに対し、ハードウエアとソフトウエアの両面でセキュリティを強化する
買収したマカフィーのソフトウエア技術とvProの組み合わせにより、広範なスマートデバイスに対し、ハードウエアとソフトウエアの両面でセキュリティを強化する
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インフィニオンの無線部門買収により、3GやLTEに接続するためのデバイスも自社のラインアップに加え、無線LANやWiMAXと併せて多様な選択肢を提供するとしている
インフィニオンの無線部門買収により、3GやLTEに接続するためのデバイスも自社のラインアップに加え、無線LANやWiMAXと併せて多様な選択肢を提供するとしている
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2011年後半に向けた22nmプロセスの開発は順調とし、これまでより小型の機器にIAプロセッサーの普及を広げていく考え
2011年後半に向けた22nmプロセスの開発は順調とし、これまでより小型の機器にIAプロセッサーの普及を広げていく考え
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 ここ数年私はIDFで、『コンピューティングはどう変わっていこうとしているのか』という話をしてきた。しかし今回私が主に話すのは、『インテルがどう変わろうとしているのかという話だ。インテルのコンピューティング・ソリューション・プロバイダーへの変革について話したい――」。

 2010年9月13日(米国時間)に開幕した、米インテル主催の技術者向けイベント「Intel Developer Forum 2010 San Francisco」。ポール・オッテリーニ社長兼CEOは、初日のトップを飾る基調講演をこんな言葉で語り始めた。世界最大手の半導体メーカーという立場にありながら、将来に向けた自社の変革が必要であるとの決意を示すものであった。

急速に広がるスマートデバイスへの対応は、喫緊の課題

 オッテリーニ氏はまず、パソコンをめぐる市場動向の変化について語った。途上国でのパソコンの需要拡大、先進国における「一家に一台」から「一人一台」への浸透などにより、販売台数が増え続けているとする。「今年はパソコン業界にとってマイルストーンの年。なぜなら、パソコンが1日当たり100万台売れる時代になったからだ。さらにパソコンの販売台数は、2010年と2011年に2年連続で年率18%増という高成長が見込まれている」。

 一方で、コンピューティング市場の拡大の牽引役となっているのは、パソコンではないとする。主役はタブレット機やスマートフォン、多機能テレビ、カーナビなどの組み込み機器など「スマートデバイス」とする。「これらのスマートデバイスの普及台数は2010年から2014年までの4年間で現在の2倍以上に増え、50億台を超えるだろう」。

 このようにスマートデバイスの普及が進むと、ユーザーは自分の用途にあった機器を複数所有するようになり、さらに、例えばパソコンでダウンロードした映像を携帯機器に転送して外出先で視聴するなど、複数の機器を自在につないで活用するのが当然になるとみる。

 しかしオッテリーニ氏は「そうしたシームレスなコンピューティングが当然になる時代を見据えたデバイスやソフトウエアの準備はまだまだできていない。喫緊の課題だ」と警鐘を鳴らす。「インテルとしては、さまざまな機器をインテルアーキテクチャーで提供し、どのデバイスでも一貫した操作性や互換性を提供するよう継続して取り組んでいきたい」とオッテリーニ氏は語る。

相次ぐ買収の背景は「チップベンダーからソリューションベンダーへの変革」

 そうした新たなコンピューティングの世界へ対応するためにインテルが採ったのは、複数の著名なベンダーの買収という手法である。

 「インテルは10年前、パソコンとサーバー向けに優れたチップを提供することに注力すると決めた。それは今も変わっていない。しかし今は、チップだけでなくソフトウエアやサービスまで含めたソリューションを、世界中のユーザーと開発者に提供することが使命だと考えている。それが一貫した操作性や互換性の確保に必要だと考えている」。

 インテルは2009年6月、組み込みOS大手の米ウインドリバー・システムズを買収している。これはソフトウエアとサービスの領域を強化するためのもの。携帯機器向けにソフトウエアを提供する道を確保することで、オープンプラットフォーム戦略を強化する狙いがあるとする。

 またオッテリーニ氏は、コンピューティングを支える3つの柱として、パフォーマンス、セキュリティ、インターネットへの接続性を挙げた。その上で、「既存のvProだけでなく、ハードウエアとソフトウエアの両面でセキュリティを確保する意味で米マカフィーを買収した。また独インフィニオンテクノロジーズの無線部門の買収により、既存の無線LANやWiMAXに加え、3GやLTEのネットワークを通じた接続性も自社で提供可能になる」と、相次ぐ買収の狙いを語った。

 パフォーマンスについては、「当社は世界で唯一32nmプロセスとhigh-kメタルゲート技術を実用化し、処理性能と省電力を両立している。次世代の22nmプロセスもスケジュール通りだ。 22nmプロセスによるCPUの試作も順調に進んでおり、2011年後半には量産出荷できるだろう」と語った。

 このほかオッテリーニ氏は、現在インテルが進めている主な製品や技術について、デモを交えながら紹介。搭載OSの種類を問わずネットブック向けに多様なアプリケーションソフトを提供するサービス「AppUp Center」、次世代CPU製品群「2nd Generation Core processor」(開発コード名Sandy Bridge)、米グーグルなどと共同開発しているパソコンベースの多機能テレビ「Google TV」、Atomベースのタブレット機などと大画面テレビを無線で接続し映像をリアルタイムに伝送する「WiDi」などについて、今回のIDFで詳細を明らかにしていくとした。