文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会は2010年9月7日、第9回会合を開催した。今回の会合ではアクセスコントロール回避規制についての議論が行われた。

 アクセスコントロール回避規制の強化は、「知的財産推進計画2010」(2010年5月21日に知的財産戦略本部が決定)において、「法技術的観点を踏まえた具体的な制度改革案を2010年度中にまとめる」とされている。担当府省は、文部科学省と経済産業省、財務省である。これを受けて法制問題小委員会は今後議論を進めて、2010年11月から12月をメドに意見のとりまとめを目指す。

 事務局(文化庁著作権課)は今回の会合で、この問題について集中的に議論を進めるため、「技術的保護手段ワーキングチーム」の設置を提案し、委員に了承された。WTのメンバーは、法制問題小委員会の主査である土肥一史氏(日本大学大学院知的財産研究科教授)が指名する。

 会議の冒頭では、知的財産戦略推進事務局の関係者が、アクセスコントロール回避行為の現状を報告した。ゲームの分野では、「マジックコンピューター」や「モッドチップ」と呼ばれる機器や装置を使って違法ゲームを利用するという行為が多発しており、「被害額は日本だけで5000億円に上る」という試算結果を示した。

 フラグ方式(特定のフラグ信号を機器側で読み取りコントロールを作動させる方式)によるアクセスコントロールおよびコピーコントロールについては、いわゆる「無反応機器」の問題がある。これについては、知財本部 コンテンツ強化専門調査会の「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ」が、無反応機器への規制は結果として「機器側にすべてのコントロールに反応することを義務付けることになる」として、「規制すべきでない」という結論を報告書に盛り込んだ。今回の会合でこの件が報告されたところ、委員からは反対意見は出なかったため、法制問題小委員会での議論の対象から外れる方向となった。放送業界では、デジタル放送のコピー制御信号に反応しない機器が流通しており、問題になっている。