NTTグループは2010年9月1日、総務省のICTタスクフォースに対して8月31日に提出した「メタルアクセスのマイグレーションに対するNTTグループの考え方」について記者向けのレクチャーを開催した。レクチャーでは、同グループがこれまでメタルアクセスのマイグレーションについて主張してきた考えを改めて述べた。また「光の道」構想実現のための具体策としてソフトバンクが提案していた、公費を使わずに月額1400円でFTTHサービスを提供できるとする案に対して、五つの点から具体的に数字をあげて反論した。

 まず、ソフトバンクが光100%整備後の維持コストを年間5200億円としていることについて、施設保全費を計上しないなどにより費用を極めて過少に計上していると指摘した。その上でソフトバンクが試算するインフラ整備の投資額2.5兆円を前提に、計算方法の違いや漏れを補正した試算結果として、ソフトバンクの試算は年間4600億円以上過少であると述べた。

 続いてソフトバンクが光100%整備の投資額として示している2.5兆円の総額も、計算に含まれていない項目があり過少であるという。NTTは、電話以外のメタル専用線やADSL(非対称デジタル加入者線)専用型ドライカッパといったメタル回線の光化投資額や、オール光化までの過渡的に発生するメタル回線の維持・更改に係る投資額、オール光化後も必要となる光ファイバーや既存設備の維持・更改に必要な投資額――などが計算に含まれていないと指摘した。こうした要素を考慮すると、光100%整備には少なくともソフトバンク指摘の倍額は必要となるという。

 月額1400円でサービス提供ができるとするソフトバンクの案に対しては、「実現不可能」とした。その理由として、先に示したインフラ整備後の維持コストの年間過少分4600億円に加えて、料金業務などで発生するサービスコストも2850億円過少で、この二つだけで7500億円以上が過少となるとした。その結果、ソフトバンクが主張する営業利益3499億円はなくなりサービスは赤字に転落、1ユーザー当たり月額1400円でのサービス提供も実現不可能になるという。NTTが考える提供可能な金額として「月額1400円の倍以上」という目安を示した。

 さらに、アクセス回線会社で最初にメタル設備を一括償却し、1.8兆円の特別損失を計上する案については、ソフトバンク試算の純資産(株主資本)である1兆7465億円が一気にゼロとなり、債務超過に陥ると指摘した。これはNTT株主に負担を押し付けて営業利益を出す構造であり、NTT株主の株主価値を大きく毀損するという。

 最後にアクセス回線会社と通信事業会社の総合的検証として、光100%整備後にサービスコスト(営業費)が0億円となっている不合理な点や、5年後の光100%整備後の営業利益が、アクセス回線会社と通信事業者の合計で6472億円まで増加するという楽観的な試算も「考えにくい」と疑問を呈した。