「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」の「過去の競争政策のレビュー部会」と「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」は2010年8月31日、2部会合同の第13回会合を開催した。今回は「光の道」戦略大綱案と「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ(WG)」がまとめた中間取りまとめが発表された。中間取りまとめの柱は、700/900MHz帯の周波数割り当ての方向性、周波数移行・再編を支援する枠組みの整備、2020年に向けた周波数確保の目標、である。

 700/900MHz帯の周波数割り当ての方向性では、700/900MHz帯でペアバンドを構成する案と、700MHz帯でペアバンドを構成し、900MHz帯でも同じくペアバンドを構成する案を併記している。ただし、後者の700MHz帯と900MHz帯のそれぞれでペアバンドを構成する案では、初めて具体的な検討モデル案が提示された。

 700MHz帯は、(1)現状で利用の見通しが立っている周波数(730M~770MHz)の中でペアを作る(15MHz幅×2を確保)、(2)米国の700MHz帯割り当てを考慮してペアバンドを作る(20MHz幅×2を確保)、(3)アジア太平洋地域の標準化団体であるAWF(APT Wireless Forum)で検討中の周波数と協調してペアバンドを作る(35MHz幅と30MHz幅を確保)、(4)TDD方式で割り当てる(40MHz幅、または75MHz幅を確保)、といったモデル案が示された。

 このうち(2)と(3)は、テレビ放送事業者が使用している無線中継システム(FPU:Field Pickup Unit)およびラジオマイクの周波数移行が前提となる。(2)は700MHz帯の中でITS(高度道路交通システム)のすぐ上の周波数の移行が想定されている。(3)は700MHz帯ではない周波数の移行が前提となっている。(4)はWiMAX Forum Class7との周波数協調を前提としており、利用見通しが立っている730M~770MHzを使う場合と、FPUやラジオマイクの周波数移行を伴う場合が併記されている。

 900MHz帯について示された2つのモデル案は、いずれも欧州における割り当てを考慮したものである。ただし一方は5MHz幅×2を確保し、既存システムの移行が不要であること、他方はICタグ(RFID)やMCA(Multi-Channel Access)無線システムを移行したうえで15MHz幅×2を確保するという違いがある。これらのモデル案について、移行にかかる時間、コスト、既存システムや近隣他国との干渉回避が技術的に可能かといった観点で検討を進めるとしている。

「費用は空いた周波数を使う事業者が負担する道がないか議論する」

 構成員からは、既に利用しているシステムの周波数を移行する場合の費用負担について質問が出た。これに対して、電気通信市場の環境変化への対応検討部会とWGの構成員を兼ねている藤原洋氏(インターネット総合研究所 代表取締役所長)は、「費用負担はできるだけ市場原理、つまりはこれから空いた周波数を使う事業者が負担する道がないか議論していく」と回答した。また経済ジャーナリストの町田徹氏からの「もっとも多くの負担をする事業者に周波数を使わせる、電波オークションまで議論するということか」という質問に対しては、内藤正光総務副大臣が、「電波オークションを前向きに検討する。特に700/900MHz帯をスムーズに再編するために電波オークションが導入できないか検討していく」と回答した。

 周波数移行・再編を支援する枠組みの整備については、移行対象周波数の利用者に対して、移行費用を負担する仕組みのことを指す。構成員間の議論でも出た移行後の周波数を利用する事業者が負担するのか、または電波利用料を充当するのかなどを検討すべきとしている。2020年に向けた周波数確保の目標は、トラフィックの急増が見込まれる移動通信分野において、2015年までに300MHz幅以上、2020年までに1500MHz幅以上を確保することを掲げている。

 700/900MHz帯の周波数割り当て案や電波オークションについては、今後もWGで検討を続け、結論は2010年10月末をメドに出す。同年11月末に周波数再編アクションプランを策定するスケジュールである。ただし技術的な検討については、情報通信審議会 情報通信技術分科会の「携帯電話等周波数有効利用方策委員会」と連携する。