日本放送協会(NHK)と日立製作所は2010年8月31日、放送映像を低解像度の動画ファイルに変換する際に、画質の劣化を抑えながら識別情報を電子透かしとして埋め込めるトランスコーダーを共同で開発したと発表した。

 日立独自の電子透かし技術によって、放送映像を低解像度の動画ファイルに変換する際の画質劣化を低減する。具体的には、映像が単調な領域や輪郭部を避け、絵柄の複雑な領域に多くの識別情報を埋め込む。埋め込んだ識別情報を専用ソフトで把握できることで、「データ流出対策への貢献が期待される」(NHKと日立)という。今後、NHKと日立は今回のトランスコーダーを活用して、放送映像のファイルベース化を進めて映像データの効率的なセキュリティ管理を実現する。

 トランスコーダーの入力映像のデータ転送速度は100Mbps、出力映像は512k~2Mbpsである。例えば画素数が1440×1080の映像(再生時間は60分)を約37分で電子透かし付きの映像(画素数は352×240)に変換できる。電子透かし埋め込み情報量は、映像1フレーム当たり64bitである。

 近年、ホームページの作成やインターネット上での二次利用などで、放送映像といった高解像度の動画ファイルを低解像度の動画ファイルに変換(トランスコード)する機会が増えている。動画ファイルは、パソコンなどの機器と親和性が高く、取り扱いが容易な一方で、データ流出に対する対策が求められる。現在、データ流出を防ぐため、データの識別情報を画像や文字として映像に上乗せ(スーパーインポーズ)するなどの対策が行われているが、本来の映像に不要な情報を上乗せしなければならないという問題があった。こうした現状を踏まえてNHK と日立は、今回のトランスコーダーを開発した。

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