総務省は2010年8月30日、2011~2013年度を対象にした「次期電波利用料の見直しに関する基本方針」を公表した。注目すべきポイントは、放送事業者などに対する電波利用料の軽減措置(特性係数の適用)が維持されること、電波オークションについて議論すること、である。

 電波利用料は、例えば放送事業者は二つの軽減基準を満たしているため1/4(各基準の係数1/2の2乗)に軽減されている。その基準とは放送法で定められた内容が「ユニバーサル・サービスまたはこれに準じた責務などが法令などで規定されている」「国民の生命、身体の安全および財産の保護に寄与するもの」というものである。基本方針ではこうした軽減措置については中期的に見直すとしながらも、次期電波利用料では負担額の急激な変化を考慮して維持するとした。

 新しいものではマルチメディア放送とホワイトスペースにおける電波利用料の扱いについても触れており、マルチメディア放送は軽減措置は行わない。ホワイトスペースはa群と呼ばれる電波の経済的価値に応じた課金(使用帯域幅や出力によって決定する課金)はせず、b群と呼ばれる無線局数に応じて負担する電波利用料だけが課されることとなった。

 電波利用料の枠組みも変更される。今期の電波利用料はa群とb群の比率が6対5だったが、次期はa群の割合を増やす。また、b群の課金に対しては無線局数での単純な均等割りに変更する。これにより、携帯電話基地局(年間3000円)や地デジ難視聴対策用のギャップフィラー(年間6100円)の電波利用料は、年間250円の携帯電話機と同等額になる見込みだという。

 このa群/b群の枠組みの変更については、同日に公表された基本方針に関する意見募集結果において、多くの放送事業者から反対の意見が示されている。これは使用帯域幅に対する課金割合が増えることで、放送事業者の電波利用料額が増額する可能性があるからである。これに対して総務省は、「専門調査会の結論である基本方針案を尊重し、使用帯域幅に応じた負担部分を拡大することが適当」という考えを示している。

 電波オークションについては、「十分検討に値する。このため、オークションの導入について本格的な議論を行う」と結論づけている。ただし先行事業者が周波数をすでに獲得している状況で、後発の事業者がオークションで落札するということは競争政策上の問題が生じるため、対象となる周波数帯やタイミングは慎重に選定すべきとした。

 周波数再編を促進する枠組みを検討することにも触れている。これは周波数の再編の過程で周波数移行を伴う場合、周波数移行先での無線設備を取得する費用を電波利用料で負担するというものである。現在再編の検討が進んでいる700/900MHz帯を念頭に置いたものと見られる。

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