写真1●アクセンチュア 執行役員 兼 経営コンサルティング本部 統括本部長 兼 戦略グループ アジアパシフィック統括 マネイジング・ディレクターの西村裕二氏
写真1●アクセンチュア 執行役員 兼 経営コンサルティング本部 統括本部長 兼 戦略グループ アジアパシフィック統括 マネイジング・ディレクターの西村裕二氏
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写真2●アクセンチュア 経営コンサルティング本部 SCMグループ統括 パートナーの赤羽陽一郎氏
写真2●アクセンチュア 経営コンサルティング本部 SCMグループ統括 パートナーの赤羽陽一郎氏
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 アクセンチュアは2010年8月24日、SCM(サプライチェーンマネジメント)のトレンドに関する記者説明会を開催。「日本企業のSCMは1990年代から進化しておらず時代遅れ」---。同社 執行役員の西村裕二氏(写真1)と経営コンサルティング本部 SCMグループ統括 パートナーの赤羽陽一郎氏(写真2)はこう指摘し、日本企業のSCMに必要な改善項目を説明した。

 西村氏は、ここ20年間の世界のSCMの進化には3つのフェーズがあったと分析する。まず1990年代に、企業内で組織ごとに分断された物・情報・資金の流れを統合して効率化を図ろうという「第1次SCM改革」があった。2000年代に製造機能を海外移転する動きが強まると、グローバルでSCMを標準化する「第2次SCM革命」が起こる。そして、2005年以降は個々のビジネスモデルに合わせてSCMを再び多様化させていく「第3次SCM革命」を迎えている。その中で、「日本企業のSCMは、第1次革命の頃には世界最先端だったがその後進化していない」(西村氏)。

 現在の日本企業のSCMには、いくつかの共通課題があるという。まず、「販売情報を効率的に収集できない」(西村氏)という点だ。1990年代と現在では、経営環境が大きく変化している。1990年代の主要市場が米国・欧州・日本の3極だったのに対して、現在は中国やインドなどの新興国が成長して市場が多極化している。「市場が多極化し、需要を肌で予測することは非常に困難になった。現代において需要予測に元づいたSCMを行うためには、リアルタイムに販売情報を収集するシステムが必要だが、多くの日本企業ではExcelシートをメールでリレーしているのが現状だ」(赤羽氏)。

 さらに、20年間でサプライヤーとメーカーの力関係が変化した。1990年代は製品を組み立てるセットメーカーが優位な立場にあったが、現在は液晶や電池などを提供するキー部材メーカーの立場が強い。「国内製造業のSCMは“世界一対応力がある”と揶揄される。その意味は、優秀な調達部隊が人海戦術でサプライヤーと交渉して、需要の変動を吸収してしまうということだ。だが、サプライヤー優位になった現在では、現場レベルで柔軟な仕入調整を行うことは難しくなっている」(赤羽氏)。

 「現代のSCMは、需要は急増したり突然消滅したりするという前提に立つべきだ」と赤羽氏は説明する。このような経営環境に対応するために日本企業に必要なのは、サプライチェーンの起点をエンドユーザーへの実販売台数に置くことだ。「日本のSCMは製造中心に考えられており、工場出荷数を“販売台数”としている企業が多い。一方、現在成長と高収益率を両立している海外の先進企業は、エンドユーザーへの実販売数情報をリアルタイムに収集してSCMを行っている」(赤羽氏)。

 実販売数情報が経営幹部層までリアルタイムに集まるようになると、サプライヤーに対して経営トップ自らが購買の意思決定をできるようになるというメリットもある。「サプライヤーとの力関係が逆転した今、経営トップはサプライヤーに直接アプローチして、友好な関係を作る必要がある。現在、日本ではサプライヤーの満足度を考えたSCMを実施している企業はとても少ない」(赤羽氏)。