九州・沖縄地区のJFN加盟FM局などが参画する九州・沖縄マルチメディア放送は、「福岡市デジタルサイネージ福岡実験推進協議会」(座長は菊池尚人慶応義塾大学准教授)が主体となって実施する「船舶におけるデジタルサイネージ公共情報発信事業」に参加する。JR九州高速船が運航する福岡・釜山間の国際定期船「ビートル」内での小型パーソナルデジタルサイネージによる観光/公共情報提供を8月20日から本格実施する。

 この事業では、福岡ユビキタス特区に設置された実験試験局からの放送波を利用して、コンテンツを配信する。同特区は、地方ブロック向けマルチメディア放送の先行実験を実施することを目的に、エフエム東京とCSK-ISが「ISDB-Tsbの拡張による3セグメント放送方式の実験」を共同提案したもの。現在、6セグメント(3セグメント放送を二つ)のサービス実験を実施している。

 船舶におけるデジタルサイネージ公共情報発信事業では、国際定期航路の船舶内という設置場所の特性に合わせた情報の提供を行う。釜山から福岡へ向かう船舶内では、福岡・九州の観光情報や安全・安心などの公共情報を韓国語で提供する。福岡から釜山に向かう場合は、韓国のこうした情報を日本語で提供する。

 コンテンツの制作と提供は、福岡市やJR九州高速船の協力のもと。エフエム福岡、シティ情報ふくおか、西日本新聞社の参画で行う。小型パーソナルデジタルサイネージ端末の開発・製造は、エフエム東京、エル・エス・アイ ジャパン、バイテックが担当した。7インチ型のカラー液晶パネルを搭載した端末(入力はタッチスイッチ、コンテンツ記録媒体は新規開発の筐体に内蔵したSDカード、アンテナは内蔵タイプ)を合計100台、ビートル号に設置する。

 台数の多い小型パーソナルデジタルサイネージのコンテンツ更新を、放送波の持つ一斉同報という強みを生かして行うことで、円滑な運用とコスト削減が期待できるという。また、IPDC(Internet Protocol Data Cast)方式によるコンテンツ配信を採用し実装しており、幅広いコンテンツの提供が期待できると説明する。

 九州・沖縄マルチメディア放送は、V-Low帯を利用するマルチメディア放送の委託事業者として3セグメント放送サービスの実現を目指す九州・沖縄地区の地域ブロック会社として設立された。現在は、JFN加盟FM放送局のほか、新聞社、新規参入企業など合計19社の出資者で構成されている。