パナソニック電工インフォメーションシステムズの田中啓介 執行役員技術開発・新事業担当
パナソニック電工インフォメーションシステムズの田中啓介 執行役員技術開発・新事業担当
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 「ICTコスト削減のため、新規開発投資を抑制する企業が多いが、本当にやるべきは全体の7割を占める運用・保守コストにメスを入れることだ」。パナソニック電工インフォメーションシステムズ(パナソニック電工IS)の田中啓介 執行役員 技術開発・新事業担当は「仮想化フォーラム 2010 Summer」の基調講演でこのように語った。

 同社はパナソニック電工の情報系子会社であり、親会社向けのビジネスが売り上げ全体の55%を占める。今回、田中執行役員は「パナソニック電工のシステム部門」というユーザー企業の立場で運用・保守コスト削減について講演した。

 パナソニック電工ISでは「高止まりするインフラ運用コストが大きな問題となっている」と認識し、これまでサーバーやストレージ、バックアップ、ネットワークなどのインフラを統合してきた。その経験から「インフラ統合によるコスト削減を実現するには、ハードウエアコストではなく、運用担当者の負担を減らすことを優先すべきだ」との考えに至ったという。

 その理由は「シンプルなシステム構成で障害発生頻度を下げる、障害時の自動復旧を可能にする、サーバーの提供を短時間で柔軟に実行できるようにする、といったことで運用担当者の人件費を大幅に減らすことができる」(田中執行役員)ためだ。同社の場合、以前はアプリケーションの運用と兼務で21人の担当者がインフラを運用していたが、インフラ統合後は専任の担当者3人で運用しているという。人件費は年間5000万円減った。

 サーバー統合にはイージェネラの「BladeFrame」とデルの「DELL PAN System」を、ストレージ統合には3PARの「InServ」を採用した。BladeFrameとDELL PAN Systemはディスク、スイッチ、ケーブルといったサーバー障害の要因となるパーツが少ないことや障害時に数分で待機系サーバーへの切り替えが可能な点を、InServは容量設計が不要な点などを評価した。

 パナソニック電工ISは2008年から、社内に2300台あるサーバーのうち、1400台を550枚のブレードサーバーに置き換える計画を進めている。2010年4月時点で、300枚のブレードの上で75のアプリケーションと450のゲストOSが動いているという。

 統合したインフラは「社内クラウドサービス」として提供している。提供するインフラは、サービスレベルに応じて「松」「竹」「梅」に分類。例えば、提案・見積もりシステムといった基幹系システムには、「松」に当たるBladeFrameの物理サーバー1台を、「梅」に当たる開発・テスト用システムにはDELL PAN SystemをXenで仮想化した仮想サーバーを提供する、といった具合だ。