日立製作所 エンタープライズサーバ事業部 第二サーバ本部 第三部 部長の芳野泰成氏
日立製作所 エンタープライズサーバ事業部 第二サーバ本部 第三部 部長の芳野泰成氏
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 「基幹系システムを載せるプライベートクラウドなどの仮想化基盤では、信頼性や性能も重要になる」。2010年8月3日、「仮想化フォーラム2010 Summer」で、日立製作所の芳野泰成氏(エンタープライズサーバ事業部 第二サーバ本部 第三部 部長)はこう指摘した。

 従来、仮想化基盤は、ITリソースの高効率利用、迅速なプロビジョニング、柔軟な運用性などの利点が重視された。しかし基幹系システムを載せるには、それだけでは不十分というわけだ。

 では、信頼性と性能を高めるにはどうしたらよいのか。芳野氏は、LPAR型仮想化技術の導入が一つの選択肢になるという。

 LPARは「論理パーティション」の略。メインフレームに由来する仮想化技術で、1台の物理サーバーを、複数の論理パーティションに分割する。その上で各論理パーティションに、CPU、メモリー、HBA(ホストバスアダプター)などのリソースを割り当て、ゲストOSを稼働させる。

メモリー障害の影響範囲を局所化

 LPAR型仮想化技術の一つ、日立製作所の「Virtage(バタージュ)」では、メモリー障害の影響範囲を局所化できる。メインメモリーの一部が故障しても、障害が発生するのはそのメインメモリーを割り当てた論理パーティションだけ。それ以外の論理パーティションは、問題なく稼働する。同様に、CPUのL1、L2を除くキャッシュメモリーについても、障害の影響を受けるLPARを局所化できるという。

 これは信頼性向上の効果だが、一方の性能についても、HBAを含むリソースを各論理パーティションに割り当てるので、「従来の経験を生かして性能設計を行える」(芳野氏)。さらにVirtageのハイパーバイザーは軽量でオーバーヘッドが小さく、性能向上を図りやすいという。

丸紅や北九州市をはじめとして採用企業が増加

 ただし仮想化技術としての機能は、まだ発展途上の段階にある。Virtageでは、論理パーティションを物理サーバー間で移動させる際、タイマー設定ができない。そのため夜間バッチなどのタイミングで移動させるには、手動で操作する必要がある。このタイマー機能は、現在開発中だという。

 また、ライブマイグレーションにも対応していない。論理パーティションを別の物理サーバーに移動させるには、いったんゲストOSをシャットダウンする必要がある。

 Virtageにはこうした側面があるものの、信頼性や性能などの利点が評価され、丸紅や北九州市をはじめとして採用企業が増えているという。仮想化基盤に基幹系システムを収容する企業が増えているなかで、今後はLPAR型仮想化技術が注目を集めるかもしれない。