日本オラクル システム事業統括本部 ソリューション統括本部 プリンシパルセールスコンサルタントの下道高志氏
日本オラクル システム事業統括本部 ソリューション統括本部 プリンシパルセールスコンサルタントの下道高志氏
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 「ハードウエアの進化にともない、クラウドインフラのアーキテクチャにも変化が起こっている」---。2010年8月3日、東京都内で開催された「仮想化フォーラム2010 Summer」に日本オラクル ソリューション統括本部 プリンシパルセールスコンサルタントの下道高志氏が登壇。クラウドコンピューティングの課題と、トレンドの変化について講演した。

 まず下道氏は、「Oracleは、クラウドの分野においては業務システムのSaaS(Software as a Services)プロバイダーとして知られているが、PaaS(Platform as a Services)の領域でも実績がある」と説明。米Amazon.comなどのパブリック・クラウド・ベンダーへ製品を提供した実績や、米HPや米Credit Suisseに対してプライベートクラウド構築のための製品を提供した事例を紹介した。

 「クラウドのメリットを話すとき、日本のITベンダーは“コスト削減”を前面に打ち出すが、本来は“スピード”と“柔軟な拡張性”がクラウド導入の利点だ」と下道氏は指摘する。突然のトラフィック増加に柔軟に対応できるのがクラウドを利用する最大のメリットであり、加えて「必要なリソースを迅速に確保したあとは、そのリソースをすぐに返却できる点もクラウドのポイントだ」(下道氏)。クラウド利用を考えるときには、リソース確保に要するスピードだけでなく、リソースの解放にかかる時間にも配慮する必要がある。

 次に下道氏は、企業がクラウド導入する際の阻害要因に言及し、「ITベンダーの多くが誤認識している」(下道氏)という。ITベンダーの多くは、クラウド導入の決め手は「他社の成功事例」や「クラウド事業者のブランド」「サービスラインナップ」だと考えているが、実はユーザー企業が気にしているのは別のポイントだ。企業がクラウド導入をためらう3大要因は、「コスト」「セキュリティ」「運用体制」である。特に運用体制については、「今のところ完成されたモデルがない。クラウドのインフラを最適化できるITベンダーが不在なため、個々のビジネスに対応した環境を管理できないのが問題だ」(下道氏)。

 クラウドインフラの運用体制に関して、下道氏は「成功モデルと認定するにはまだ時間を要するが、1つの潮流」と前置きした上で「Facebook」の事例を紹介した。Facebookのソーシャル・メディア・サービスは、2000台のサーバーで運営されている。そのうち、1200台は8コア、800台が16コア。サーバー1台につき12Tバイト(一部は24Tバイト)のストレージと、32Gバイトのメモリーを搭載する。このシステム構成について、「安価なコモディティサーバーをたくさん使ってインフラを構築するのはなく、ハイスペックで集約型のサーバーを利用している。これは、クラウドのトレンドの変化だ」と下道氏は分析する。

 もう1つ、クラウドのトレンドに変化がある。これまで、FaceBookやTwitterなどのソーシャル・メディア・サービスの多くはパブリッククラウド上で稼働していたが、今、これらのシステムを自社内のプライベートクラウドで運用するようになってきたという。「集約型サーバーを自社内で運用すれば、パブリッククラウドやアウトソースを利用するより運用コストを削減できる場合がある」(下道氏)。