日本通信は2010年7月29日、地域WiMAX事業者向けの共用CSN事業から撤退すると発表した。「KDDIが批判的な動きを取り、それに対する対応が不十分であるなど、地域WiMAX推進協議会の立場が大きく変化した。協議会の全面的な支援が得られない状態で本事業を実施することは、当社の経営リスクを高め、株主の利益を毀損する事態を惹起する可能性が高い」と理由を説明している。

 CSN(Connectivity Service Network)は認証や課金機能を提供するシステムのことである。共用CSNを導入することによって、各地域WiMAXに導入されたシステムに合わせた専用品ではなく、汎用的な通信モジュールやWiMAX内蔵パソコンをユーザーが使えるようになる。これによって地域WiMAXの加入が容易になるという地域WiMAX事業者の見通しは変更を迫られることになる。

 地域WiMAX事業者の団体である地域WiMAX推進協議会は、2010年3月23日に共用CSNの提供候補企業による提案説明会を実施していた。説明会には日本通信ら4社が参加し、地域WiMAX事業者を中心とする協議会の構成員に対して、事前に協議会が公開していたCSNの仕様に基づいた提案を行った。4社による提案後、協議会は構成員に対してどの企業を支持するかを問うアンケートを実施した。結果は約2/3が日本通信の提案を支持した。この結果を受けて日本通信は、5月6日に「地域WiMAX推進協議会の推奨を受け、クラウド型の共用CSNサービスを提供する」という発表を行っていた。

 順調にいけば日本通信は2010年7月にも共用CSNサービスの提供を提供する予定だった。しかし同じくCSNを複数の事業者で共同利用するサービスを提供しているKDDIは、協議会が日本通信を推奨したことに対して抗議する電子メールを、協議会に送った。元々KDDIは共用CSNの提案説明会に参加したい旨を表明していたが、協議会が示した仕様にOMA-DM(open mobile alliance-device management)の実装することという記述があり、その実装を説明会に参加する上で必須事項とする協議会と実装しなくても提案に参加したいとするKDDIとで折り合いがつかなかったためである。こうした経緯を経て、KDDIは日本通信の発表の後に抗議をした。

 KDDIの抗議メールがどう影響したかは不明であるが、その直後に日本通信から協議会に対して、共用CSN事業から撤退したいという申し出があった。協議会は事業から撤退しないよう日本通信を説得したが、交渉は不調に終わり、撤退の発表となった。

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