写真●KDDIの小野寺正社長兼会長
写真●KDDIの小野寺正社長兼会長
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 KDDIは2010年7月23日、2011年3月期の第1四半期決算を発表した。売上高は前年同期比で1.4%増の8660億円、営業利益は同8.8%減の1293億円と増収減益となった。

 第1四半期の減益は、売り上げの大半を占める移動体通信事業において、非トライバンド端末(新800MHz帯非対応端末)の移行を計画的に進めた結果、「端末の販売台数が前年同期比で約27%増加し、販売手数料の総額ベースでの削減幅が小幅にとどまったこと」(小野寺正社長兼会長、写真)を理由とした。

 同社は2012年7月までの800MHz帯の周波数再編に伴って、800MHz帯、新800MHz帯、2GHz帯のトライバンド端末への移行を進めている。2012年7月でこれまでの800MHz帯の利用ができなくなるため、新800MHz帯に対応したトライバンド端末へすべて移行させる必要がある。2010年3月末時点で新800MHz帯に対応していない端末は892万台。今期の移行は98万台であり、2010年6月末時点で非トライバンド端末は769万台残っている。小野寺社長は「今のペースでは(2012年7月までにすべて巻き取るのは)厳しい。もう少しペースを上げる必要がある」との見方を示した。非トライバンド端末の巻き取りは今後も収益に影響を与える可能性がある。

 固定系事業単体では、営業損失が前年同期比からほぼ半減した。連結子会社の中部テレコミュニケーション(CTC)やジャパンケーブルネット(JCN)、海外の子会社などの売り上げ増のほか、ジュピターテレコム(J:COM)の処分信託株式の一部が売却されたことに特別利益57億円を計上したことが寄与したという。

 J:COMの持ち分法の投資損益は、第2四半期からの取り組みになるため今期は反映されていない。なお今回初めて、J:COMとの事業提携項目の具体的な開始時期を明らかにした。例えば、2010年8~9月から関西地区で共同のプロモーションを実施、2011年1月からUQコミュニケーションズのMVNO(仮想移動体通信事業者)としてJ:COMがモバイルWiMAXサービスを提供、2011年4月からKDDIのケーブルプラス電話を用いたJ:COM新電話サービスの開始、「auまとめトーク」のJ:COM新電話サービスへの適用などとしている。

「NTTの経営形態の議論では、インフラ整備率100%の整理がまず必要」

 質疑応答では、7月から総務省で議論が再開された(関連記事)NTTの経営形態を含む「光の道」構想について質問が集中した。

 2015年にブロードバンドの利用率100%を目指す「光の道」構想は、(1)インフラ整備率を「90%→100%」にする措置、(2)利用率を「30%→100%」にする措置、という二つの大きな要素がある(関連記事)。その上でNTTの経営形態を検討する形だ。

 小野寺社長は「まずは90%→100%のインフラ整備の方法論をはっきりさせる必要がある。100%にもっていくための必要な措置としてNTTの経営形態を議論するのか。それとも別の理由で議論するのか。その理由付けによってもNTTの経営形態の策は変わってくる」とした。

 このあたりは、まだ総務省のICTタスクフォースでも十分に議論されていない。NTTグループは「離島や山間部を含めて1.5兆円で整備率を100%にできる」としている。小野寺社長は「この金額の妥当性がよく分からない。すべて光でやればコストは膨らまざるを得ない。タスクフォースではすべて光ではなく、無線を含めて検討する形になったと認識している。我々だけで整備率100%を実行するのは不可能だが、例えばモバイルWiMAXを活用するような、我々なりのコストと方法論を提示したい」とした。小野寺社長はこのような考えを、既に予定されているICTタスクフォースのヒアリングの場などで訴えていきたいという。

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