写真●クアルコムの遠隔医療プロジェクトで貸し出す血圧計と通信装置
写真●クアルコムの遠隔医療プロジェクトで貸し出す血圧計と通信装置
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 携帯電話向け半導体などを手掛ける米クアルコムは2010年7月22日、携帯電話網を使った遠隔医療プロジェクトを実施すると発表した。患者に血圧計と通信装置を配布し自宅での測定結果を毎日自動的に収集する仕組みを構築。病院では見つけにくい「仮面高血圧」などの症状発見に役立てる。

 プロジェクトは北海道と兵庫県で実施する。北海道の壮瞥町(そうべつちょう)の高齢者100人に、オムロンの血圧計と専用通信装置を貸し出す(写真)。通信装置は、遠隔医療サービスを手掛けるケルコムが開発したもので、KDDIの携帯電話網を利用したデータ通信機能を備える。

 血圧計で測定したデータは、USBケーブルを介して通信装置に送信され、さらに携帯電話網を経由してケルコムのサーバーに送られる。9月から1年間、起床後と就寝前の血圧を計測。その結果を分析し、「仮面高血圧」の発見や投薬効果の分析、合併症との関連性調査などに役立てる。

 仮面高血圧とは、病院では正常な血圧なのに、自宅で早朝や夜に血圧を測ると高い血圧値になる病態のこと。正常な血圧と思われる人の10~15%は、仮面高血圧であるという。通常の高血圧と同様に治療が必要だ。病院での診断は難しいが、家庭で血圧を計測しそのデータを分析する仕組みがあれば発見できる。

 奈良県の斑鳩町でも8月、100人を対象に同様のプロジェクトを開始する。慢性心不全患者には血圧計と通信装置、リハビリ中の患者には歩数計、体重計、通信装置を貸し出す。

 これらのプロジェクトは、クアルコムがグローバルで実施している「Wireless Reachイニシアチブ」と呼ぶ社会貢献活動の一環で、費用はクアルコムが負担する。アジアにおける医療IT化などを調査・研究している社団法人メディカル・プラットフォーム・エイシアと提携し、プロジェクトの実施はケルコムに委託する。