ドイツ証券は2010年7月16日、同社が6月1日に大阪証券取引所の前場取引開始時に起こした大量の誤発注に関する社内調査結果を発表した。誤発注を起こしたシステムは、トラブル前日の夜にデータファイルの形式を変更していたが、当日そのデータを正しく読み込めなかったため、誤った注文を大量に発生させたとしている。

 今回のトラブルは、プログラムによる自己勘定取引を行う「アジア・クォンツ・トレーディング部(AQT部)」の専用システムで発生した。AQT部は、「日経225ETF」のロングポジション(買い)と、「日経225先物」のショートポジション(空売り)とで裁定取引を行うことで、リスクヘッジをしていた。ところが問題発生当日の6月1日は、変更後のシステムが誤った市場データを読み込んでしまった結果、日経225先物の価値がゼロ円と計算された。一方で、日経225ETFに関しては既存のポジションが存在していた。システムはこの不均衡を是正するために、注文回数で6910回、合計で16兆円の誤った先物売り注文を出してしまった。

 AQT部のシステム売買は、常時担当者が監視しており、今回の誤発注に関しても、数十秒の間に取り消し処理を開始した。取り消し処理は、システムとマニュアル対応の両方で実施した。自己取引のみを行うAQT部のシステムで発生した障害であるため、顧客取引やAQT部以外の自己勘定取引には影響していないとしている。

 再発防止策としてドイツ証券では、AQT部のシステムの使用を停止したほか、日本法人におけるAQT部の閉鎖も決定した。AQT部では3人の従業員が勤務していた。より具体的なシステムトラブルの詳細に関しては「トレーディングシステムは、機密性が高いシステムであり、本社の方針として明らかにできない」(ドイツ証券広報)としている。