写真●シグマクシスの倉重英樹会長(撮影:皆木優子)
写真●シグマクシスの倉重英樹会長(撮影:皆木優子)
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 「これからの企業競争を勝ち抜くには、社員が『モチベーション3.0』になれる環境が必要だ」。2010年7月16日、シグマクシスの倉重英樹会長は「IT Japan 2010」の講演でこう語った。

 モチベーション3.0とは、ジャーナリストのダニエル・ピンク氏が述べている考え方。社会や人への貢献、人間としての成長、知的好奇心をベースに働いている人のことを指す。金銭や名誉のために働いている人はモチベーション2.0、生命維持のために働いている人はモチベーション1.0である。

 倉重会長は2008年のシグマクシス創業以来、創造的な企業活動のために、自社のオフィスやIT環境、企業制度を整備してきたという。具体的には、次の4つの施策を実施した。

 1つめは、プロフェッショナルを育てる人事制度。組織が社員に求めている能力を明確に定義し、それに基づいて社員を評価する。これにより、社員は自分のスキルをどう伸ばせばいいかが意識しやすくなる。

 2つめは、プロジェクトベースの仕事スタイル。顧客が望んでいる価値を提供するには、異なる才能が顧客も交えてコラボレーションできるプロジェクト単位が望ましい。従来型の組織では部門ごとのネゴシエーションに労力がとられ、顧客が見えなくなる。

 3つめは、ナレッジ・マネジメント。社員の増力化を助けるのに知識は必須なので、検索エンジンとSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で、知識や他の才能にアクセスしやすくした。

 最後が、デジタル・モバイルワークである。社員に生き生きと仕事をしてもらうには、家庭や地域生活とのバランスが欠かせない。在宅勤務など、一人ひとりの社員にとって最適なスタイルで働けるようにモバイル機器を整備した。

 倉重会長がシグマクシスを創業したのは2008年春。その後まもなくリーマンショックが発生した。「だがそれでも、四半期ごとに25%の売上増を達成してきている。社員が輝ける環境を整えたからだと自負している」と倉重会長は締めくくった。