写真●インテルの宗像義恵副社長(撮影:皆木優子)
写真●インテルの宗像義恵副社長
(撮影:皆木優子)
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 「インテルの2010年第2四半期は創業42年で最高の決算となった。これには2009年2月に70億ドル投資して32nmプロセスの半導体工場を建設したことが奏功した」。

 「IT Japan 2010」の最終日にあたる2010年7月16日、インテルの宗像義恵副社長は「成長のためのITイノベーション」というテーマで講演。企業の成長には「コアコンピタンスへの集中」、「生産性の向上」を着実に成し遂げる投資が必要だと訴えた(写真)。

 宗像副社長が例に挙げたインテルの半導体工場への投資は、コアコンピタンスへの集中投資の一例だ。「当時は不況を脱していなかったが、半導体の生産と半導体を使ったソリューションの提供こそが自社のコアだと理解したうえでの意思決定だった」という。「インテルの好業績は特別なことをしたからではない。基本的な経営戦略を着実に実行しただけだ」とする。

 このほか、コアコンピタンスへの集中投資では「Tick-Tock開発モデル」を紹介した。宗像副社長は「半導体の性能を上げてコストを下げるには、トランジスタの実装密度を上げていく『プロセステクノロジーの進化』(Tick)と、同じプロセス内での『アーキテクチャの進化』(Tock)がある」と説明。Tick-Tock開発モデルではこれらを毎年交互に行うという。32nmプロセスの半導体工場の建設は、プロセステクノロジーの進化に位置付けられる。

 生産性の向上としてはIT投資を挙げた。宗像副社長によると、インテル社内では10万台のサーバーが稼働し、そのうち70%は半導体の設計に使っているという。社員が利用するパソコンは9万台あり、うち7万台はノートパソコンで社外でも積極的に利用している。サーバーは4年に1回、パソコンは3年に1回のペースで入れ替えているという。

 速いペースでサーバー、パソコンを入れ替える背景には「社内のシステム部門が年1回、IT投資の経営への貢献を指標化したアニュアルレポートを作成している」ことがあるという。「サーバーは半導体設計の生命線で、処理速度の向上は半導体開発の生産性を向上させられる」。

 ノートパソコンの社外利用では、紛失や盗難への懸念が付きまとう。これに対しては「パソコンが無くならないと考えるほうが無理がある。アクセス権限を工夫するなどパソコンが無くなる前提でシステムを作るべき。パソコン1台が無くなったからといって、会社がつぶれたりダメージを受けるようなぜい弱なシステムである方が問題だ」との見解を示した。「インテルの『vProテクノロジー』などセキュリティ技術は進化している。そうした技術を使いつつ、ノートパソコンを持ち出せるようにした方が仕事の効率化になる」とした。

 講演では、Xeon5600番台、同7500番台、Itanium9300番台といった2010年に発売したプロセッサの概要も紹介した。ミッションクリティカル用途向けのItaniumシリーズについては、「9300番台は第7世代で、その次は開発コードネーム『Poulson』、次の次には『Kittson』とロードマップを用意している。長期的に安心して使える」と強調した。

 講演の最後に「半導体は産業全体の先行指標と言われている。(インテルが好業績だったため)今後は確実に景気回復に向かうと思う。そこでの競争に生き残るには、コアコンピタンスへの投資と生産性向上による事業成長が必須だ」と締めくくった。