写真●トレンドマイクロの大三川彰彦取締役日本地域担当
写真●トレンドマイクロの大三川彰彦取締役日本地域担当
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 「数年前までのウイルス被害は、全世界に被害を及ぼしたため情報が流通しやすく、対策も取りやすかった。今は犯罪組織による局所的な攻撃が中心となり、セキュリティ被害の89%が表に出てこなくなっている」。2010年7月15日、開催中の「IT Japan 2010」の講演で、トレンドマイクロの大三川彰彦取締役日本地域担当は、セキュリティ脅威の傾向をこう分析した(写真)。

 大三川取締役は、局所的なセキュリティ脅威が表に現れにくくなった要因として、企業システムを取り巻く技術環境の変化があると指摘する。「仮想化技術、モバイル端末などのクライアントの多様化、パブリッククラウドとプライベートクラウドの混在によって、企業システムの境界線はなくなる」とした上で、「Webからの脅威がますます強化されることに対して、セキュリティ対策にもイノベーションが必要だ」と、訴えた。

 具体的な対策としては、「クラウドからの脅威と、自社で活用するクラウドのための防御の二つの側面で考えることが必要」だと言う。クラウドからの防御に対しては、パターンファイルのマッチングで追いつかない部分に、ユーザーからの報告などを蓄積したレピュテーション(評価)を活用することが有効だとした。

 自社で活用するクラウドの防御は、仮想化、パブリッククラウド、仮想デスクトップを使ったシンクライアントの三つの場面でそれぞれ最適化された対策が有効だという。特に「今後製品化するウィルスバスター コーポレートエディションで、仮想デスクトップに特化して、スキャンやアップデートを効率化した技術を導入する」と、自社製品の優位性について触れた。

 講演の最後には、「セキュリティ対策がなぜいたちごっこになるのか」という質問が出た。これに対して大三川取締役は、「犯罪組織がなくならない限り、新たなセキュリティ脅威が登場し続ける。ただ、どのシステムにどれだけのレベルの対策を施せばよいか、といった最適な強度について分析が進めば、企業の負担感は軽減できるのではないか」とした。そのために同社では、企業ユーザーとの情報交換を行っているという。こうした取り組みから最適なソリューションを開発していく意向を強調した。