写真●NEC 代表取締役 執行役社長の遠藤信博氏
写真●NEC 代表取締役 執行役社長の遠藤信博氏
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 「NECは、クラウドサービスを提供するためのコンピュータ技術、ネットワーク技術、デバイスのすべてを有している数少ない企業。クラウド市場を加速することで、環境性能が高く人に便利な社会を作っていく」---。2010年7月14日、日経BP社が主催する「IT Japan 2010」にNEC 代表取締役 執行役社長の遠藤信博氏(写真)が登壇。「人と地球にやさしい情報社会の実現に向けて」と題して講演した。

 同社が目指す「人と地球にやさしい情報社会」とは、「ICTのインテリジェンスで地球環境と共存する社会インフラを構築し、限りある資源を守りつつ豊かな生活が可能な社会」(遠藤氏)である。「そのような社会を実現するための鍵となるのは、当社の“C&C(Computers & Communications)クラウド”であると遠藤氏は説明した。遠藤氏の言うC&Cクラウドとは、同社のコンピュータ技術とネットワーク技術を融合させたクラウドプラットフォームを指す。「コンピュータとネットワークの両方の製品技術を有しているのが当社の強みだ」(遠藤氏)。

 「様々な電子データがC&Cクラウドに集まることによって、これまでにない新しいサービスが創出される」(遠藤氏)。例えば、自動車の走行データと、信号機などをコントロールする道路交通システムのデータをクラウドへリアルタイムに集めて連携させることができれば、交通渋滞が発生しない社会を実現できる。交通渋滞が緩和されれば自動車のブレーキを踏む回数が減少するので、CO2排出量も減少する。

 クラウドプラットフォーム以外にも、同社はクラウド向けの技術を持っている。1つは、RFID(ICタグ)リーダーやセンサーなど、クラウドへデータをインプットするためのデバイス。もう1つは、パソコンや携帯電話、デジタルサイネージなどクラウドサービスを利用するためのデバイスである。「当社の技術をもってすれば、クラウドサービスをエンド・ツゥ・エンドで構築することが可能」(遠藤氏)。

 講演の最後には、遠藤氏に対する公開質問が行われた。「クラウド市場が拡大を続けたとき、NECの全体売上の大きな部分を占めるSI(システムインテグレーション)事業はどうなるのか」という質問に対して、遠藤氏は、「SIやハードウエアがクラウドに集約されることで、SI事業の割合は減少するだろう」と回答した。「ただし、クラウド市場が拡大することで新しいサービスが創出される。当社は、クラウドサービスのためのプラットフォームからデバイスまで有する世界で数少ない企業であり、NEC全体のビジネスは成長を続ける」(遠藤氏)。