写真●富士通の山本正已社長
写真●富士通の山本正已社長
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 「世界展開を加速する企業で『グローバルで均質なサービスを提供してほしい』という要求が強まっている。こうした声に応えるために、米マイクロソフトとの提携は不可欠だった」。2010年7月14~16日に開催される「IT Japan 2010」初日の講演で、富士通の山本正已社長(写真)はこう強調した。

 富士通は2011年初めから、同社が16カ国90カ所に持つデータセンターを活用し、マイクロソフトのクラウドサービス「Windows Azure」を自社のサービス「FJ-Azure」として提供する。第一弾として、群馬県館林市にあるデータセンターを使いサービスを提供する。

 「ICT市場に占めるクラウドの比率は、2015年には約20%に達すると試算している。2020年には50%に達するだろう。急拡大するクラウド需要を取り込むためにも、世界で均質なサービスを提供する体制を整えることが不可欠だ」と山本社長は話す。

 マイクロソフトとの提携に続けて山本社長は、クラウドを活用した新規ビジネスの開拓に言及した。特徴的な取り組みの例として、宮崎県などと共同で実施した実証実験を挙げる。「実験では、カメラやフィールドセンサーを活用し、畑の温度や水分量、生育状況などをリアルタイムに収集し、一元管理している。作業者は、畑に足を運ぶ必要がなく、作業負荷が減る」(山本社長)。

 さらに山本社長は、「農業支援システムと物流や小売業者のシステムをつなぎ、データをやり取りできるようにすれば、配送のリードタイムを縮め、新鮮な野菜を顧客によりタイムリーに届けられる。CO2排出量の削減にも有効だ」と続けた。

 講演の最後では、顧客企業のクラウド活用に関して語った。クラウドを使う上で顧客企業が留意すべき点として山本社長が挙げたのは、オンプレミスとクラウド活用の切り分けだ。「クラウドを活用する場合に、顧客企業が真っ先に取り組むべきは、業務の仕分けだ。それぞれの業務システムのSLA(サービスレベル・アグリーメント)やセキュリティなどを明確にし、自前で運用すべきものとクラウドに置き換えるものの線引きを明確にしなければならない。なんでもかんでもクラウドに移行すればいいわけではない」と山本社長は話す。

■変更履歴
第4段落で「フィールドセンター」としていましたが,正しくは「フィールドセンサー」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2010/07/15 09:17]