写真●マイクロソフトの樋口泰行代表執行役 社長
写真●マイクロソフトの樋口泰行代表執行役 社長
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 「今の日本には、海外に打って出ようという気概が足りないように思う。内需が縮小するなかで内向きのビジネスをしていては、将来日本経済はどうなってしまうのか心配だ」---。2010年7月14~16日に開催している「IT Japan 2010」初日の講演にマイクロソフトの樋口泰行代表執行役 社長(写真)が登壇。日本企業がグローバル展開するために必要な「人材育成」と「業務の標準化」について講演した。

 「少子高齢化により、長期的に内需は縮小する。日本経済の成長のためには、日本企業のグローバル化が不可欠」と樋口社長は強調する。その上で、今、日本の経営者に必要なのは「発想の転換」と指摘した。「日本の消費者に受け入れられた“良い製品”で海外進出するという発想を捨てて、海外の消費者は何を求めているのかを考えることへ経営方針を転換しなければいけない」(樋口社長)。

 樋口社長は外資系企業の日本法人代表として、グローバル人材の育成についても言及した。同社には、米国本社との接点が多い部署と、日本市場のみを相手にする部署が混在している。米国本社を相手にする人材は、語学が堪能で米国人文化への理解が深い。一方、日本の企業や消費者に商品を販売する営業部の人材は、日本人的な発想を持ち、日本文化を理解している。

 ところが、「それぞれの人材は所属部署ではプロフェッショナルだが、米国人文化のみを理解する人材に日本市場をまかせることはできないし、日本人的発想しかできない人材に米国本社との交渉はできない」と樋口社長は話す。企業がグローバル展開するときに求められるのは、「これら二つの部署を橋渡しできる“ブリッジ人材”だ」(樋口社長)。

 グローバル展開した日本企業が国際競争力を持つためには、「業務の標準化」が必要と樋口社長は言う。「自社の業務に合わせて固有のシステムを構築しているようでは、コスト、スピードの両面で競争力に劣ってしまう。業務をITに合わせていくという逆転の発想が必要だ」(樋口社長)。さらに樋口社長は、「クラウドコンピューティングは、国内外の拠点間で業務を標準化したいというニーズに応える技術である」と説明した。

 同社は、7月13日に富士通とクラウド分野でのパートナー連携を発表している(関連記事)。「“クラウド”というとITビジネスを総取りするようなイメージだが、当社は、クラウドの分野でもパートナーと強く連携していく」と樋口社長は強調する。