写真1●ソーシャルメディアを活用した「傾聴」について3氏が討論(撮影:皆木優子)
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 マーケティングにおけるソーシャルメディアの可能性は、企業側から顧客へ情報を提供するプッシュ型アプローチよりも、むしろ消費者の声に耳を傾ける“傾聴”への活用にある。では具体的に、Twitterなどのソーシャルメディアを使って、どのような傾聴マーケティングが可能なのか。

 2010年7月13日、日経BP社主催の「NETMarketing Forum 2010」において「ザ・傾聴マーケティング」と題したパネルディスカッション(写真1)が行われ、東急ハンズ、デル、ファミリーマートの3社から、それぞれ公式Twitterの担当者が参加した。モデレータ―はアジャイルメディア・ネットワーク 代表取締役の徳力基彦氏が務めた。3社の見解は、「Twitterマーケティングに短期的な収益貢献は期待できない」「Twitterは顕在化しにくい小さな不満、感想を収集することが可能」という点で一致をみた。また、Twitterを活用した傾聴マーケティングにおける各社の共通課題としては「人員リソース不足」を挙げた。

Twitterによる対話は接客の延長

写真2●デル コンシューマ オンライン アジア パシフィック オンラインマーケティングマネージャの千歳敬雄氏(撮影:皆木優子)
写真2●デル コンシューマ オンライン アジア パシフィック オンラインマーケティングマネージャの千歳敬雄氏(撮影:皆木優子)
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 マーケティングにおけるTwitterの位置付けについて、デル コンシューマ オンライン アジア パシフィック オンラインマーケティングマネージャの千歳敬雄氏(写真2)は、「8割は顧客の問い合わせにレスポンスするための手段、残り2割は情報発信ツール」と説明する。デルは、一般消費者向けの情報発信を行う「DellConsumer_JP」、広報部が管轄する「Direct2Dell_JP」、ゲーム向けパソコン「Alienware」のユーザーとのコミュニケーションを行う「Alienware_JP」などの公式Twitterアカウントを持っている。

 千歳氏がツイートを担当している「DellConsumer_JP」は、2009年4月にスタートし、現在1万1600人以上にフォローされている。「電話やインターネットの相談窓口に問い合わせるほどではない、ささいな疑問や小さなトラブルがTwitterへの質問という形で寄せられる。その質問に回答するのが、Twitter担当者の主業務である」(千歳氏)。

 東急ハンズは、商品のお得情報をツイートする「HandsNet」、ゆるい内容をつぶやく軟式アカウント「TokyuHands」、広報アカウント「HintMarket」、商品をコンピュータ検索できる「korekamo.net」など、様々なTwitterアカウントを運用している。しかし、東急ハンズ IT企画部長 兼 通販企画部長の長谷川秀樹氏(写真3)は、「Twitterだからといって特別な施策を講じているわけではない。Twitterでの対話は、店舗での接客と同じ」と述べた。

写真3●東急ハンズ IT企画部長 兼 通販企画部長の長谷川秀樹氏(撮影:皆木優子)
写真3●東急ハンズ IT企画部長 兼 通販企画部長の長谷川秀樹氏(撮影:皆木優子)
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 東急ハンズでは、Twitterはあくまで接客のためのコミュニケーション手段の1つと位置付けており、Twitterマーケティング専用のガイドラインやマニュアルは用意していないという。「商品の注文や問い合わせの窓口はあくまで店舗。Twitterに何らかの役割を持たせることは想定していない」(長谷川氏)。特に、長谷川氏が担当する軟式アカウント「TokyuHands」のコンセプトは“面白いこと”であり、消費者から難しい質問や要望などが来ることはあまりないという。

 ファミリーマートは、2009年11月30日から公式アカウント「famima_now」でつぶやいている。スタート当初は自動的に発言するプログラム(ボット)を使って、同社の店頭で調理販売しているフライドチキン「ファミチキ」を販促することに活用していたが、現在は担当者自身がファミリーマートに関するツイートにレスポンスしたり、商品やキャンペーン情報をツイートしている。「famima_now」のツイートを担当するマーケティング室 コミュニケーション戦略グループの高岡夏氏(写真4)は、「もともとチキンを販促していたゆるいアカウントのため、深刻な相談が寄せられることは少ない」と述べた。

 高岡氏は、傾聴のためのツールとしてのTwitterに効果を実感していると話す。「Twitterのつぶやきをモニタリングすることで、ミステリーショッパー(覆面店頭調査)に近い情報を収集することができる」(高岡氏)。