現行の「Googleブックス」の電子書籍閲覧画面。Googleエディションでも同様にWebブラウザーで閲覧する仕組みを採るが、「インターネットに接続していない環境でも閲覧できるようにしたい」とする
現行の「Googleブックス」の電子書籍閲覧画面。Googleエディションでも同様にWebブラウザーで閲覧する仕組みを採るが、「インターネットに接続していない環境でも閲覧できるようにしたい」とする
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グーグルが考える、Googleエディションによる出版社、オンライン書店、ユーザーのメリット
グーグルが考える、Googleエディションによる出版社、オンライン書店、ユーザーのメリット
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グーグル パートナー事業開発本部 ストラテジック パートナーデベロップメント マネージャーの佐藤陽一氏
グーグル パートナー事業開発本部 ストラテジック パートナーデベロップメント マネージャーの佐藤陽一氏
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 グーグルは2010年7月8日、電子書籍の販売サービス「Googleエディション」を日本で提供する意向を表明した。2006年から展開している「Googleブックス」の機能を拡張する形で、電子書籍を同社Webサイトなどで閲覧可能にする。具体的な提供時期は未定だが、「北米では2010年夏、日本でも2011年初めまでの早い段階で提供したい」(グーグル パートナー事業開発本部 ストラテジック パートナーデベロップメント マネージャーの佐藤陽一氏)としている。

 Googleブックスは、市販の紙の書籍などをGoogleがスキャンして、OCRで全文検索用データを生成。同社Webサイト上で書籍の全文検索ができるほか、1ユーザー・1カ月当たり総ページ数の20%を上限としてスキャンした書籍本文のイメージも無料で閲覧できるサービス。今回のGoogleエディションは、ユーザーが料金を支払うことで書籍全ページの本文のイメージを閲覧可能にするというものだ。

 グーグルはGoogleエディションの特徴として、(1)同社Webサイトでの閲覧を基本とすることで、特定の端末に依存せず閲覧可能にする(2)Google自社サイトに加え、国内のオンライン書店サイトがそれぞれ設定した価格でGoogleエディションの電子書籍を販売できるようにする――を挙げる。

 (1)については、Googleエディションで提供する電子書籍は、基本的にHTML5ベースのデータとして、Webブラウザーを使って閲覧する仕組みを採る。ユーザーの購入履歴はGoogleのサーバーに蓄積しておき、購入済みの電子書籍を任意の端末で閲覧できる。「現時点では開発中のため詳細は未定だが、HTML5のオフライン閲覧機能を使うことで、インターネットに接続していない状態でも閲覧できるようにしたいと考えている」(佐藤氏)という。本文の保存や印刷、テキストデータのコピーはできない。このほか、出版社がePub形式の電子書籍データを提供している場合は、ePubデータをダウンロードして閲覧できる。

 (2)については、Googleエディションの販売経路を広げるため、国内にある複数のオンライン書店サイトでGoogleエディションの電子書籍を扱ってもらえるよう働きかける予定としている。通常の書籍は再販制度により定価が決まっているが、各サイトでの価格は、「電子書籍は再販制度の対象外。家電量販店で販売する家電製品の価格が店により異なるのと同様、オンライン書店サイトでの電子書籍の価格も異なるものになるだろう」(佐藤氏)としている。

 収益分配については現状では未定としているが、「電子書籍の売り上げは、希望小売価格の少なくとも半額以上を出版社に分配する。電子書籍の表示画面にある広告をユーザーがクリックしたときに生じる広告収入も、同様に売り上げの半分以上を出版社に分配する」(佐藤氏)との考えを示した。

 なお、Googleブックスで提供している電子書籍のデータは、出版社からデータの提供を受ける「パートナープログラム」と、Googleが図書館の蔵書を借り受けてスキャンした「図書館プロジェクト」の2種類に分かれる。今回のGoogleエディションでは、このうちパートナープログラムで出版社から有償販売の許諾を得たもののみ提供する。パートナープログラムで出版社が未許諾の作品と図書館プロジェクトにより蓄積した電子書籍データは、Googleエディションでの有償販売の対象としない。また、新聞・雑誌など書籍以外の出版物については「米GoogleのWebサイトでは、雑誌コンテンツの一部を閲覧できるサービスがあるが、Googleエディションで販売する仕組みは用意しない。日本でも、ISBNコードの割り振られたムックまでは対象になるが、ISBNコードの付かない雑誌などは、現時点では検討していない。雑誌は書籍と比べ、出版に携わっている権利者の数が飛躍的に増えることも考慮する必要があるだろう」(佐藤氏)とした。