紀伊國屋書店が洋書に貼り付けるICタグ
紀伊國屋書店が洋書に貼り付けるICタグ
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書籍への貼り付け例
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 紀伊國屋書店は2010年7月7日、同社が販売するすべての洋書に、無線で商品情報などのデータを読み取るICタグを貼り付けることを発表した。同社の販売管理システム、在庫管理システムの更新に合わせて導入するもので、物流センターと新宿本店を皮切りに全店舗の在庫23万冊のすべてに順次ICタグを貼り付けていく。

 今回導入するICタグのサイズは60×34mmで、各書籍の裏表紙に貼り付ける。購入者が購入後にはがせるよう、粘着力の弱い再剥離のりを使っている。ICタグ内部には、1冊ごとに異なる通し番号を割り当てて記録しておく。洋書の場合、全く同一の書籍であっても仕入れ時期の為替レートなどに応じて、1冊ごとに販売価格が異なる場合があるが、従来は書籍ごとに割り振られたISBNコード単位でしか販売管理ができなかったため、販売分析が十分にできなかったという。ICタグの導入により、価格情報を含めて1冊ごとに販売状況を把握できるようになり、販売分析の精度向上が期待できるとする。

 在庫管理の効率化も図る。ICタグをスキャンするハンディターミナルは、おおむね2m以内にある書籍のICタグを同時に読み取れる性能がある。これを生かし、例えば書籍を探す際には、ハンディターミナルで目的の書籍を指定して、書棚に向かって順次スキャンしていくことで、短時間で探せるようになる。目視で書籍を探す手間が減るわけだ。店舗における棚卸しの際も、従来は1冊ずつ取り出してバーコードをスキャンしていたが、ICタグの導入により複数の書籍を一度にスキャン可能になり、棚卸しの負荷が軽減できるとする。また、物流センターと店舗の間で書籍を移動する際は、バーコードを貼り付けた専用の通函(かよいばこ)に入れ、発送時と送達時に箱ごとスキャンすることで、箱の中に入っている洋書の検品作業を省力化する。

 ICタグは凸版印刷とトッパン・フォームズの開発したもので、内部処理用のICはオランダNXPセミコンダクターズ製。通信規格はEPC Global C1G2で、周波数帯は950M~958.4MHz。将来の機能拡張に備え、512バイトのユーザーエリアを用意している。紀伊國屋書店では、既に2010年5月から越谷物流センターにある6万冊の在庫すべてにICタグの貼り付けを始めている。7月13日以降は店頭在庫についても、新宿本店の在庫分から順次貼り付けていく予定。「今後6~8カ月かけ、全店舗の全洋書への貼り付けを完了したい」(紀伊國屋書店の広報担当者)。

 なお同社は、当面は和書へのICタグ貼り付けは行わない。「和書は冊数が膨大であること、再販制度があること、為替変動などによる『一物多価』が起こらないことなどから、まずは洋書に対応した」(広報担当者)。今後は、今回導入したシステムを拡張して万引き防止目的で運用したり、作品の基本情報を店頭のハンディターミナルで確認したりできるようにする。このほか、(1)POSレジに備えられた広告用ディスプレイ(2)店内にある書籍検索用キオスク端末「KINOナビ」(3)同社のWeb直販サイト「BookWeb」(4)ポイントサービス「Kinokuniya Point」――などと連携したシステムを運用していく考えだ。

 また、詳細は明らかにしていないが、「電子書籍の基本情報を紙の書籍のICタグに書き込むことで、紙の書籍と電子書籍を組み合わせた新しい販売形態を模索している」(発表資料)としており、店頭で紙の書籍と電子書籍を比較検討したり、紙の書籍と電子書籍をセット販売したりといった手法を検討しているとみられる。