クラウド環境を統合管理する「OpenFlow」のデモから。この画面は、2台のサーバー(左上の「Paris34」と左下の「Tokyo20」)と1台のクライアントが接続中のネットワークと、パケットの経路を示している
クラウド環境を統合管理する「OpenFlow」のデモから。この画面は、2台のサーバー(左上の「Paris34」と左下の「Tokyo20」)と1台のクライアントが接続中のネットワークと、パケットの経路を示している
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サーバー管理画面で、サーバーを5台に増やしたところ(上の段で赤いマークが付いているのが、新規に追加したサーバー)
サーバー管理画面で、サーバーを5台に増やしたところ(上の段で赤いマークが付いているのが、新規に追加したサーバー)
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サーバーを追加後のネットワーク経路を表示する画面。約10秒で、ネットワーク経路が確立され、追加したサーバーが稼働開始した
サーバーを追加後のネットワーク経路を表示する画面。約10秒で、ネットワーク経路が確立され、追加したサーバーが稼働開始した
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顔認識技術のデモから。1枚の登録写真から、見え方の異なる写真を生成し、これらも学習することで、認識精度を高める
顔認識技術のデモから。1枚の登録写真から、見え方の異なる写真を生成し、これらも学習することで、認識精度を高める
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 NECは2010年7月1日、同社中央研究所で手掛ける開発案件の中から、(1)クラウド環境におけるサーバーとネットワークの統合制御技術、(2)電力供給の統合システムであるスマートグリッドに関連する技術、(3)高精度の顔認識技術のそれぞれについて、技術の詳細を公開した。(1)のクラウド環境に関連した技術は、年内の製品化が予定されているなど、中央研究所の開発案件の中でも「比較的、実用化の近い技術について公開した」(同社執行役員常務の國尾武光氏)という。

 クラウド環境向けの統合制御技術として公開されたのは「OpenFlow」。サーバーリソースだけでなく、ネットワーク構成も必要に応じて動的に変更するための技術だ。いわゆる「自律コンピューティング」の一種だが、従来のソリューションと異なるのは、負荷に応じてサーバーを動的に割り当てるだけでなく、それに伴うネットワーク、特にルーティングを動的に変更できる点。従来は、ネットワーク内に散らばる全てのルーターに一つひとつルーティングポリシーの設定変更を加える必要があった。これに対し、OpenFlowではルーターから制御機能を引き上げ、一元的に管理する。これにより、アプリケーションに割り当てるサーバー数を変更するだけで、ネットワーク上の通信経路も同時に変更できるため、クラウド環境の運用管理負担を、大きく引き下げられる。OpenFlowは、2011年3月までに製品化される予定。今後は、同一のデータセンター内だけではなく、広域のクラウド環境にも応用できるよう、開発を続けていくという。

 (2)のスマートグリッド関連技術については、各家庭などに配置される「スマートメーター」(通信機能を持つ電力計)が発信する情報のうち、特に緊急を要する情報を見分けて、優先的に配信する「コンテンツ・ルーティング」のデモを行った。IPパケットのヘッダー情報などに頼らず、データの中身を見て重要度を判定することで、スマートメーターを低コストに抑えることができるほか、今後、新しい機器やサービスが登場しても、スマートグリッド内のネットワーク側のルーティング・ポリシーを変更するだけで対応できる。

 (3)の顔認識技術では、1枚の登録画像から別の見え方を生成、学習する仕組みを解説。顔の向きや照明の当たり方が変わった状態を自動生成することで、認証の精度を引き上げている。米国国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークテストでは、160万人の登録済みデータから0.4秒で認識し、その際のエラー率は0.3%と、他の認識技術よりも高い認識精度を示したという。デモでは、同じ人物の異なる写真(顔の向きを変えた写真や、若いころの写真など)を使った場合でも、正確に本人であることを認識する様子を実演した。現在、同社の顔認識技術は入国管理でのブラックリストとの照合や犯罪捜査などで実用化が始まっており、今後はデジタルサイネージやゲームなど、一般分野に応用できるよう開発を進めていくという。

■変更履歴
当初、記者会見の内容に基づき「OpenFlowは、年内には同社のサーバー管理ソリューションである「WebSAM」に実装される予定」としていた記述を、同社の申し入れにより修正しました。[2010/07/02 18:16]