軽量Ruby開発プロジェクトの概要(福岡県の資料より引用)
軽量Ruby開発プロジェクトの概要(福岡県の資料より引用)
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Rubyチップ評価ボードの構成(福岡県の資料より引用)
Rubyチップ評価ボードの構成(福岡県の資料より引用)
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 福岡県は2010年6月25日、経済産業省の地域イノベーション創出研究開発事業に「軽量Rubyを用いた組込みプラットフォームの研究・開発」事業が採択されたと発表した。同事業は福岡県が県内外の企業や大学を組織し経産省に提案していたもの。「Rubyによる組込みソフト分野の研究開発事業は世界初であり、研究成果は製品化して世界中に展開する」(福岡県)としている。

 事業予算は、2年間で約1億4000万円。開発にあたるのは福岡CSK、九州工業大学、東芝情報システム、福岡県などで、Rubyの作者であるまつもとゆきひろ氏も軽量Rubyの言語仕様決定など「中心となって取り組む」(福岡県)という。

 Rubyは組み込みシステムでよく利用されるC言語などに比べ、開発生産性が高いとされる。福岡県ではRubyを組み込みシステム向けに最適化、軽量化することにより、家電製品などの開発生産性を向上させることが可能になると見ている。

 軽量Rubyを動作させる、家電などへの搭載を想定した電子基板「Rubyチップ評価ボード」の試作も行う。家電向けの機能を集約したRubyチップを、書き換え可能なロジックLSIであるFPGA(Field Programmable Gate Array)で実装。Rubyチップを評価するためのボードを試作する。Rubyチップの開発は九州工業大学 情報工学部機械情報工学科准教授 田中和明氏が中心となって行う。

 「Rubyチップは既存のCPUコアを使ってRubyインタプリタを実装し、性能面で重要なGC(Garbage Collection)をハードウエアで実装する。CPUコア、インタプリタ、実装するハードのすべてを1つのFPGAチップ内に格納することで、従来であればパソコンやマイコン+インタプリタで実現していたRuby処理系を、1チップで実現できる。省電力にもなると期待している」(九州工業大学 田中准教授)。

 また2010年秋に「福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センター(仮称)」を整備することも明らかにした。福岡県福岡東総合庁舎の4階と5階に開設し、広さ1926平方メートル(583坪)。研究室(4室)、会議・商談室(5室)、レンタルオフィス(12室)、セミナールーム、プレゼンテーションルームを備える。

 福岡県はRubyを核にした産業振興に取り組んでおり、2008年8月に県内外のIT企業を組織して「福岡Rubyビジネス拠点推進会議(F-Ruby)」を設立している。県内のRuby企業数は2008年8月の16社から2010年6月には64社と増加しているという。また福岡を拠点に活動するコミュニティ「Rubyビジネス・コモンズ」は会員数約750名に成長している。

[発表資料]

■変更履歴
4番目の段落の次に、九州工業大学 田中和明准教授のコメントを追記しました。 [2010/06/29 08:41]