写真1●古河電気工業ブースのパネル展示
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写真2●古河電気工業ブースのデモ
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写真3●ブロードネットマックスのパネル展示
写真3●ブロードネットマックスのパネル展示
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写真4●ブロードネットマックスのデモ
写真4●ブロードネットマックスのデモ
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 2010年6月24~26日に池袋サンシャインシティで開催されているCATV関連の展示会「ケーブルテレビショー2010」で、古河電気工業(古河電工)とブロードネットマックスが「DOCSIS over EPON」のデモをそれぞれ展示している。

 DOCSIS over EPONは、CATVのインフラを管理する既存の管理(プロビジョニング)サーバーを使って、FTTHのインフラとなるEPON(Ethernet Passive Optical Network)の管理も可能にする技術。この技術はもともと、EPON向けチップベンダーの米テクノバスが開発した。現在はテクノバスを2010年2月に買収した米ブロードコムが提供している。

 CATV事業者がFTTHを導入したいと考える理由にはいくつかある。まずは、インターネットアクセス向けのデータ用帯域を安価に確保できる点が挙げられる。CATVの場合、最新の規格である「DOCSIS 3.0」では、センター側のファイバー1本当たりの最大伝送速度は約160Mビット/秒。これに対し、EPONの場合は、現在主流のGE-PONでセンター側のファイバー1本当たりの伝送速度は1Gビット/秒になる。

 IP電話の品質の問題も挙げられる。ブロードコムが日本国内の事業者から聞き取り調査をすると、流合雑音によるIP電話の音声品質の劣化を気にする声があったという。流合雑音とは、ツリー状ネットワークの枝先にあるユーザーからの上り通信の雑音がセンター側の幹線に集まる際に、ノイズ成分も集積されてしまう現象である。センターと端末を光ファイバーでつなぐEPONでは、こうした現象は原理的に起こらない。

 ただし、CATV事業者がPONを使ったFTTHサービスを追加する場合、運用管理が複雑になるという課題があった。CATVシステムとPONシステムはプロビジョニングのためのプロトコルが異なる。このため、CATV事業者は既存のプロビジョニング・サーバーとは別に、EPON用のプロビジョニング・サーバーを新たに立てなければならず、運用管理が複雑となり、事業者にとって大きな負担になってしまう。

 そこで、DOCSIS over EPONでは、EPONシステム全体を仮想的にCATVシステムに見えるようにする「DML」(DOCSIS Mediation Layer)と呼ぶソフトウエアを使うことで、CATVのプロビジョニング・サーバーでEPONシステムを管理できるようにした。これにより、既存のCATV向けプロビジョニング・サーバーで、CATVシステムとEPONシステムの両方の一元管理を可能にする。

 ブロードコムによると、DMLによるDOCSIS over EPONは、米国では「Tier1」と呼ばれる大手CATV事業者によって評価中だという。CATV事業の規模が大きく、管理対象となる加入者数が大きい米国では、DOCSIS over EPONによるCATVとPONの管理の一元化のニーズは大きい、とブロードコムは説明する。フィードバックを反映した最終版に近いものを2011年3月に出し、それでフィールドテストを実施する。

 今回の古河電工のブースでは、パネル展示とともに、同社のOLT(Optical Line Terminal)と、ブロードコムのDMLを稼働させるサーバーを展示している(写真1写真2)。今回のシステム開発は、KDDI研究所の依頼で古河電工が進めているもので、夏ごろには評価版を完成させる予定。KDDI関連のCATV事業者以外にも売り込んでいきたいとする。

 ブロードネットマックスは、住友電工ネットワークスのOLTとONU(Optical Network Unit)、同じくブロードコムのDMLを使ったデモを展示している(写真3写真4)。ブロードネットマックスによると、住友電工ネットワークスの主眼は米国市場だが、今回の展示会で日本国内のCATV事業者のニーズをとらえたいとしている。