大手食品卸の国分は2010年6月24日、この10月までに全国約60拠点の1000台のパソコンを仮想デスクトップ環境に移行すると発表した。さらに今後数年かけて、全国185カ所のすべての物流拠点でもデスクトップの仮想化を進めるという。

 デスクトップの仮想化には、日本IBMのデスクトップ・クラウド・サービスである「IBM Smart Business Desktop Cloud」を使った。18台の日本IBM製ブレードサーバー「IBM BladeCenter HS22」上に仮想デスクトップ環境を構築した。

 国分がデスクトップの仮想化に踏み切った理由は、事業継続性を高めてもシステムの応答速度を落とさないと判断したためだ。同社は2007年に事業継続計画を策定。2008年には災害時に全国185拠点が衛星回線を利用して首都圏のデータセンターにアクセスする仕組みの検討を開始した。

 ここで課題として挙がっていたのは、衛星回線の帯域が通常回線の20分の1程度であるため、いくつかのクライアント/サーバー型の物流システムでサーバーとクライアントの通信が遅延し、処理全体も遅延することだった。今回、仮想デスクトップ環境にすることでこの課題を解消した。

 移行したことで、処理速度は通常回線利用時は10倍、通信回線利用時は60倍に上がったいう。サーバー上の仮想デスクトップをセンターで管理できるため、クライアントアプリケーションを一括で更新できるようになるというメリットもあった。

 国分は2009年6月から2010年1月までデスクトップ・クラウド環境の構築プロジェクトを進めた。2010年2月から6月までで首都圏の16拠点のクライアントを仮想デスクトップ環境に移行し、7月から9月にかけて首都圏以外の拠点へも展開する。

 仮想デスクトップとはシンクライアントを実現する一つの手法。仮想化ソフトでサーバー上に複数の仮想マシンを稼働させたうえで、利用者ごとに仮想マシンを割り当てる仕組みだ。仮想マシンにクライアント用OSやアプリケーションをインストールすることで、利用者固有のデスクトップ環境を実現できる。