写真●公開トーク中のITジャーナリスト林信行氏(右)。スペシャルゲストとして米エバーノートのフィル・リービンCEO(左)も駆けつけた
写真●公開トーク中のITジャーナリスト林信行氏(右)。スペシャルゲストとして米エバーノートのフィル・リービンCEO(左)も駆けつけた
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 「iPadはシンプルだが人の想像力をかきたてる端末。続々と新しい使い方が現れている」――。ITジャーナリストの林信行氏は新刊「iPadショック」(日経BP社)の出版記念として2010年6月21日に青山ブックセンター本店で実施した公開トークでこう語った(写真)。

 iPadはホームボタンを押さなければ、起動しているアプリケーションの専用端末になる。そんなシンプルな形態だからこそ、電子書籍やアート、楽器、ゲームなど、様々な分野の人々のインスピレーションを刺激し、次々と新しい利用方法が登場している、と林氏は語る。

 ユニークな利用法として紹介されたひとつが、ある大学の医師のケースだ。iPadに医療データを入れ、手術の際、参考にしているという。またある写真家は、自分の写真集に音楽を付けiPadのアプリケーションとして発表している。

 当初「iPod Touchが大きくなっただけでは」とも言われたiPadだが、林氏は「大きくなったからこそ体験が変わる」と強調する。分かりやすい例が楽器アプリだ。楽器アプリはiPhoneでも盛り上がりを見せているが、「iPadでは画面が大きくなり演奏しやすい。さらに新しいチップを搭載しているので反応も早い」と林氏は語る。
 
 「デバイスは、その大きさによって共鳴する利用シーンがあるのでは」という林氏の指摘も面白い。目とデバイスの距離感は、デバイスの大きさによって変わる。iPhoneのようなサイズだと、Twitterのタイムラインを見る程度の情報量が最適であり、そのため今でも続々とiPhone向けのTwitterクライアントが出ていると分析する。一方iPadは、サイズが大きくなったことで、一度により多くの情報量を認識できる。林氏は「最近はあまり使っていなかったRSSリーダーを、iPadでは使うことが多くなっている。iPadはRSSリーダーのように多くの情報量を一度に表示する使い方に向いているのでは」と語る。

「iPhone 4はスペック面でも攻めてきた」

 林氏は6月24日に発売が迫った「iPhone 4」についても触れた。アップルはこれまでスペックに現れない価値を追求してきたと強調する林氏だが、「なんとiPhone 4ではスペック面でも攻めてきてしまった」(林氏)。

 その一つの例が、iPhone 4が採用した「人の網膜を超えた」と称する高い解像度を持つ「Retinaディスプレイ」だ。林氏は、6月に開催されたアップルの開発者向け会議「WWDC 2010」で一足先にiPhone 4を体験した感想を踏まえ、「目が良い人であれば、iPhoneのサイズで新聞が普通に読めてしまうほど解像度が向上している。これまでのiPhoneは解像度が低かったからこそインタフェースの良さがあった。そこにさらに解像度が増すことで、iPhoneはどれだけ破壊的なデバイスになるのか」と語った。

 さらにiPhone 4は「iPhone 3GSがおもちゃのように見えてしまう」(林氏)ほど、本体のデザインに高級感があるという。例えばホワイトモデルでは、ヘッドホン端子の中の色もホワイトにするなど、細部も徹底的にこだわっているとのことだ。

 そんなiPhone 4だが、iPhone 3GSの予約実績の10倍を超えるなど早くも人気の爆発を見せている。林氏はこの状況について、「当初iPhoneはネガティブなことばかり言われていたが、今やiPhoneの成功を誰もが認めるようになっている点が大きい。さらにiPadが日本だけ特別な販売方式となったことで、NTTドコモ版のiPhoneを期待して買い控えていた層が諦めた影響もあるのでは」と分析した。