総務省は、日本通信が2010年4月19日に意見申し出をしていた件について、6月18日付けで回答したことを明らかにした。日本通信が総務省に意見申し出していたのは、NTTドコモが法人向けのデータ通信市場において、原価を下回る可能性がある料金を法人ユーザーに提示し、電気通信事業法上の公正競争を阻害していると訴えたもの。対する総務省の回答は、「法律に触れる問題点はただちには認められない」(料金サービス課)というもので、日本通信の訴えはひとまずは退けられた形だ。

 日本通信がNTTドコモを名指しで訴えたのは、同社がドコモと相互接続してMVNOを実現するための協議をしており、「限りなく確からしいドコモの原価情報を知る立場にあるから」(日本通信)。日本通信がつかんだドコモのある企業への料金提案が、原価割れに限りなく近く不当廉売の疑いがあるとしていた。日本通信はこの問題が解決しないままだとMVNOとして法人向けデータ市場で競争できないとして、当面法人市場での展開を断念し一般コンシューマ市場に専念していた。

 この日本通信の指摘に対し、NTTドコモも5月に記者説明会を開催。そこで「不当廉売はしていない。MVNOも十分に競争できる水準にある」(NTTドコモ)と日本通信に真っ向から反論した。ドコモの説明では、同社の接続料を含む設備コストは、年間の全体の設備コスト約7000億円を同社の実稼働契約数約4000万で割って月額換算にした額で、1契約当たり月額約1500円だという。これに営業コストや端末コストを足した額が現在のネットワークの原価に当たる。

 総務省は日本通信の意見申し出を処理した結果、「ドコモの提案料金とMVNOの接続料金を比較した場合にも、前者が後者に比べて極めて廉価であるとは必ずしも認められない」、「提案料金がネットワークの原価よりも相当に低いとは必ずしも認められない」と判断。電気通信業法に基づく業務改善命令や約款の変更規定などの対象には当たらないとした。

 なお日本通信は、総務省の回答の表現を「明確な判断を回避している。NTTドコモの法人向け相対料金とNTTドコモの原価はいずれも数値的に比較可能」として、意志決定にかかわる行政文書の開示を総務省に請求したことを明らかにしている。

 今回の問題の元になっている法人分野の相対取引は、事前規制から事後規制に転換した2004年の電気通信時事業法の改正によって可能となったもの。契約約款によらずユーザーごとに自由な料金を設定できる。その結果、携帯各社はカタログ・スペックから大幅な値引きをした料金を提案したり、企業にお試しで端末を貸し出すといった顧客獲得合戦を繰り広げている。

日本通信のプレスリリース