2010年6月9~11日に千葉・幕張メッセで開催された「Interop Tokyo 2010」展示会で、IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース(枯渇対応TF)がブースで多数のセミナーを開催した。10日のセミナーからいくつかを紹介する。

参加者一人ひとりにルーターとパソコンを用意

写真1●IPv4アドレス枯渇対応TFが開催したハンズオンセミナーの様子
写真1●IPv4アドレス枯渇対応TFが開催したハンズオンセミナーの様子
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 今年はハンズオンセミナーを新設した(写真1)。プログラムは(1)ルーターにIPv6関連の設定をする、(2)パケットキャプチャー・ツールのWiresharkでIPv6アドレス割り当て関連の挙動を見る」---の2種類。

 各回12人の参加者に対して、一人ひとりにルーターと設定確認用パソコンを1台ずつ用意。講師の説明を聞きながら、自分で設定操作をして学習した。枯渇対応TFのスタッフは、参加者が設定操作に詰まった際のフォロー役を務めた。

 「はじめてのIPv6ルーティング~OSPFを動かしてみよう!~」は、ルーターにインタフェースとIPv6アドレスを設定し、その後ルーティングプロトコルであるOSPFv3(Open Shortest Path First v3)の設定を施すという内容。要所要所で、ルーターのコマンドやping、telnetなどを用いて設定を確認した。講師は枯渇対応TF 教育WGの服部 亜紀子氏。

写真2●6rdのデモ。BBIXとソフトバンクBBが提供を開始している。左は6rdサービスに対応するサービス用ルーター
写真2●6rdのデモ。BBIXとソフトバンクBBが提供を開始している。左は6rdサービスに対応するサービス用ルーター
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 「はじめてのIPv6トラブルシュート~WiresharkでIPv6パケットをキャプチャしてみよう~」では、ルーターにIPアドレスを設定したあとパソコンにルーターと重複するIPv6アドレスを割り当て、このときのアドレス割り当ての動きをWiresharkで確認した。ルーターが流すRA(Router Advertisement)と呼ぶメッセージもWiresharkでキャプチャーしてみた。講師は教育WGの土本 康生氏。

 枯渇対応TFのブースには、動きを見られるデモとして「CATVのIPv6アクセス」「来年4月以降NTTのNGN上で始まるネイティブ方式のIPv6インターネット接続サービスを模倣した環境」「6rd(IPv6 Rapid Deployment)方式によるIPv6インターネットサービス」「DS-lite(Dual-stack lite)によるインターネットアクセス」を展示していた(写真2)。

アドレス枯渇問題の本質と現実を議論

写真3●セミナーで講演するフレッド・ベーカー氏
写真3●セミナーで講演するフレッド・ベーカー氏
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 同日午後には、IETF v6ops チェア/元IETF議長である米シスコシステムズのフレッド・ベーカー氏が登壇した(写真3)。

 IETFが最近推奨しているアプローチは、IPv4上でIPv6を有効にすることだとベーカー氏は話す。今のアプリケーションやサービスはIPv4で動いており、そこでIPv6を有効にしてうまく動くならそのままでよく、頓挫してもIPv4がまだ動いていてセーフティーネットがかかるためだ。安定性を確認して両方を動かせばよく、IPv4をいつオフにするかはビジネス判断になるという。

 ベーカー氏は、トランスレーションやトンネリングなどIPv4/IPv6を共存させる手法を挙げたあと、「ただしこれらはIPv6を展開するための移行技術であり、長期的なソリューションではない」と説明した。最後に1960~1980年のネットワークと現在のネットワーク、今後のネットワークの違いを解説して講演を締めくくった。

写真4●パネルディスカッションの様子
写真4●パネルディスカッションの様子
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 10日の最後には「IPv4が無くなったらどうなるの?~枯渇問題と現実解~」と題したパネルディスカッションを開催した(写真4)。登壇したのは、奈良先端科学技術大学院大学の山口 英氏と日本ネットワークインフォメーションセンターの前村 昌紀氏である。

 三井情報の仲西 亮子氏の司会のもと、IPv6移行の話題を中心に議論した。そして最後に「IPv6を使う生活を始めよう」「プロダクトデザイナーは製品のロールアウトまでに時間がかかるのだからIPv6対応をいま考えるべき」「インターネット環境や機器が対応していないなら声をあげよう」とメッセージを出した。