写真 記者会見に臨んだ3社の関係者(左からKDDIの両角寛文・取締役執行役員専務、J:COMの森泉知行・代表取締役社長、住友商事の大澤善雄・取締役常務執行役員)
写真 記者会見に臨んだ3社の関係者(左からKDDIの両角寛文・取締役執行役員専務、J:COMの森泉知行・代表取締役社長、住友商事の大澤善雄・取締役常務執行役員)
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図1 固定電話事業における協業
図1 固定電話事業における協業
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図2 移動通信事業での連携
図2 移動通信事業での連携
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図3 VODサービスにおける連携
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図4 広告事業での連携とコンテンツの相互配信
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図5 JCNとの資本・ビジネス面での連携
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図6 KDDIネットワークの活用と次世代STBの開発
図6 KDDIネットワークの活用と次世代STBの開発
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 ジュピターテレコム(J:COM)、住友商事、KDDIの3社は2010年6月10日、3社間のアライアンス関係の構築に関する覚書を締結し、今後アライアンス関係の構築に向けた各種施策の詳細検討を行うことに合意したと発表した(写真)。

 アライアンスの内容は大きく、「通信事業・商品提携」「メディア事業」「CATV事業」「技術・インフラ」の四つに分類できる。

 通信事業・商品提携の第1ポイントが「固定電話事業」である。J:COMは、KDDIが提供しているケーブルプラス電話サービスの卸提供を受け、ケーブルプラス電話サービスと同等の新たな電話サービス(新電話サービス)の提供を検討する。具体的には、まず「J:COMのレガシー系電話設備(交換機ベースの電話設備)に収容されているJ:COM PHONEのユーザーを新電話サービスへ移行する」(図1)。また新規に獲得する電話サービスのユーザーには新電話サービスを販売する方向。J:COMが提供する新電話サービスのユーザーとKDDIが有する携帯及び固定電話サービスのユーザーとの間の優遇通話(「auまとめトーク」)などを利用者に提供し、J:COM、KDDI双方のユーザー満足度の向上や加入促進効果、解約防止効果を期待する。

 第2ポイントは「携帯電話事業」である。J:COMが提供するサービスメニューにKDDIの携帯電話サービスを加える検討を行う。サービスの開始に先立ち、J:COM及びKDDIは、それぞれの商品をそれぞれの媒体・資産を活用して行うクロスセルプロモーションを、まずは関西地区から2010年夏以降に実施することを検討している。

 第3ポイントは「高速無線データ通信事業」である。高速無線データ通信分野においては、KDDIの関連会社であるUQコミュニケーションズとの具体的な協議を開始する。まずはJ:COMの高速インターネット接続サービスであるJ:COM NETの加入者に対するオプションサービスとして高速無線通信サービスの提供を検討する(図2)。

 メディア事業の第1ポイントは「VODサービスでの連携」である。現状は、J:COMグループおよびKDDIグループのそれぞれがVODサービスを提供しているが、サービスの連携を目指して、まずはVODコンテンツの調達一元化について具体的な検討を行う。将来的には、両社のVODシステムを統合することも検討する(図3)。

 メディア事業の第2ポイントは、「広告事業における連携」である。J:COM及びKDDIの広告営業部隊が連携することで、J:COM/KDDI携帯電話のメディアを横断した広告クライアントを獲得し、両社の広告ビジネスの拡大を目指す。「コンテンツの相互配信」として、J:COM、KDDI並びに両社グループ会社が保有する映像コンテンツを、それぞれのメディアで相互配信することで、両社のコンテンツ事業の拡充に向けた具体的な検討を行う(図4)。

 CATV事業関連では、「ジャパンケーブルネット(JCN)との資本・ビジネス面での提携」である。両社におけるケーブルテレビ事業に関するシナジーの早期実現に向けて検討を進める(図5)。

 技術・インフラ面では、まず「電話ネットワークのKDDIへの集約」を進める。また、J:COMが回線を保有していない電話以外のネットワークについても、KDDIのネットワークインフラの活用など、更なるコスト削減に向けた検討を両社で行う。

 次世代セットトップボックス(STB)の開発も進める。今後の高度なサービス展開のため、STBの高度化とこれを実現するサービスプラットフォームの高度化が不可欠であるという認識からである。STB及びサービスプラットフォームについては、将来のサービスの自由度を念頭に、Androidなどのオープンで先端的な技術を採用し、STBの試作機の作成について協力していく(図6)。

 このアライアンスにおける具体的な施策の詳細な内容及び時期については、今後3社間で協議を行い決定する予定。

 住友商事はJ:COMの設立以来の株主であり、「J:COMはこれまで様々な形で事業上の支援を受けてきた」という。一方、J:COMの主要株主となったKDDIは、住友商事によるJ:COM株式に対する公開買付けが終了した後の2010年4月下旬から、4項目についてワーキンググループを設置し、事業上のシナジーの実現に向けた初期的な協議・検討を行ってきた。検討の結果、一定の事項について両社が協働することによりシナジーの実現が見込まれるとの共通認識に達したため、J:COM、住友商事及びKDDI間で各種施策の詳細検討を行うことにつき合意したという。