写真1●エンジニアリングリサーチ担当のアラン・ユースタス上級副社長
写真1●エンジニアリングリサーチ担当のアラン・ユースタス上級副社長
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写真2●検索技術担当フェローのアミット・シングハル氏
写真2●検索技術担当フェローのアミット・シングハル氏
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写真3●アジア太平洋地域のプロダクト マネージメント ディレクター、アダム・スミス氏
写真3●アジア太平洋地域のプロダクト マネージメント ディレクター、アダム・スミス氏
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 米グーグルは2010年6月8日、「検索の科学」と題したイベントを開催した。エンジニアリングリサーチ担当の上級副社長アラン・ユースタス氏をはじめ、検索の技術研究や製品開発を担当するエンジニアが登壇。現在までの検索技術の進化と、今後のビジョンを語った。

 「かつて、Web検索で得た情報の中身は、古いのが当たり前だった。今では1分前に更新された情報ですら、検索できるようになった」。ユースタス上級副社長は、Web検索技術の進化の一端を、こう説明する(写真1)。

 リアルタイム検索に加えて、グーグルがここ数年かけて取り組んできたテーマが、個人ごとに最適な検索を可能にする「パーソナライズド検索」、音声による検索や動画検索などだ。「検索は本来、とてもパーソナルなものだ。同じ『膝』という単語でも、医者の場合と患者の女性の場合とでは、求める結果の種類もレベルも違う。医者などに向けて学術論文検索を提供しているのは、異なるレベルの情報を、最適な形で提供する取り組みの一つだ」(ユースタス上級副社長)。

 検索技術の開発を進めるにつれて、同社のコンピュータ基盤は「クラウド=雲」と呼ばれるほど急激に拡大。そして「何千台ものマシンを一度に動作させることで、統計的に翻訳機ができるのではないかというアイデアにたどり着いた」。

 文字の翻訳や音声認識といったコンピュータサイエンスの長年のテーマに、同社はクラウドを応用した。「もちろん、まだ人間のレベルには至っていない。しかし重要なことは、翻訳や音声認識の精度が、毎年大きく上がっていることだ。まもなく、携帯電話を挟んで、私とみなさんがそれぞれの母国語を使って話し合えるようになる。この5年間で、その世界が具現化していくだろう」。

 続いて検索技術担当フェローのアミット・シングハル氏が登壇した(写真2)。「学生のころに抱いていた夢は、テキストを超えた検索、言語を超えた検索、個人のための検索、今この瞬間の検索だ。グーグルはテクノロジーを理解し駆使することで、こうした技術をようやく可能にしつつある」。

 次の夢は何か。それは「検索しない検索」だという。「検索エンジンが、私が何をするべきかを教えてくれる。『カレンダーに予定が書いてあるが、道路で事故が起きているから会議の予定を組み直した方がいい』。これを検索エンジンが教えてくれるようになる。今はSFだと思うかもしれない。しかし近い将来、必ず可能になる」。

 最後にアジア太平洋地域で検索関連製品のプロダクト マネージメント ディレクターを務めるアダム・スミス氏が、同地域における検索の課題とそれに対する取り組みを述べた(写真3)。

 最も大きい課題は、やはり言語の壁である。「アジア太平洋地域の人々の母国語の情報を、Web上にどうやって増やして検索可能にするかは、重要な課題だ。例えば世界人口の8%がアラビア語を話すが、Web上のアラビア語コンテンツは1%にすぎない」。

 グーグルは文字の翻訳や音声認識といった基礎的な技術を組み合わせて、様々な製品やサービスに組み込んでいる。一例が動画共有サービス「YouTube」の字幕機能だ。字幕付き動画については、翻訳機能を使って他の言語へ自動翻訳できる。

 さらに、字幕が付いてない動画についても字幕をつけられるようにした。英語の音声を認識して文字に変換して字幕をつける。それを翻訳して、中国語の字幕として表示する、といった具合である。

 このほか、オーストラリアのチームが取り組んでいる紙媒体のデジタル化プロジェクト、インド・バンガロールのチームが作った、利用者による地図作成機能「マップメーカー」、地図上の地名を利用者の母国語で表示する日本生まれの機能などを紹介。「ローカルのチームとグローバルのチームが連携して、言語や地域特有の問題を解決しようとしている」。