慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の金正勲准教授を座長とする「新たな時代の電波制度とメディア・コンテンツ産業の在り方に関する勉強会」(以下、電メコン勉強会)は2010年6月7日、これまでの議論の成果として6つの政策提言と報告書を発表した。発表した報告書は電メコン勉強会のブログのページからダウンロードできる(該当サイト)。

 電メコン勉強会は金准教授が中心となり、産業界や学会、法曹界、政界から有志が集まって2010年1月に立ち上げた。メンバーは金准教授のほか、インデックスの小川善美代表取締役会長、情報経済研究所長で大阪大学名誉教授の鬼木甫氏、民主党衆議院議員の岸本周平氏、立教大学社会学部メディア社会学科の砂川浩慶准教授、メディアジャーナリストの津田大介氏、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の夏野剛特別招聘教授、シンクの森祐治代表取締役社長、クアルコムジャパンの山田純代表取締役会長兼社長、東洋大学経済学部の山田肇教授の計10名。1月から5回に渡って議論を進め、全56ページの報告書にまとめた。

 発表された報告書では、電波政策とメディア・コンテンツ政策に絞って現在の制度設計の問題点を指摘。民間のイノベーションを促進する具体策として、「周波数利用目的の国際的ハーモナイゼーション」、「周波数の転用・移転によるブロードバンド向け周波数帯域の 割り当て促進」、「電波オークションの段階的導入」、「映像コンテンツ振興機構の創設」、「映像コンテンツの著作権集中処理機構の創設」、「日本版フェアユース等の柔軟な著作権制度の導入」の6つを提言している。

 金准教授は本誌のインタビューに対し、「電波とメディア・コンテンツ政策は政策的な失敗が目立ち、実効性に欠け、民間のイノベーションを阻害してきた代表的な分野。何をすればイノベーションを促進できるのか、総花的にならず優先順位をつけて提言をまとめた」と話す。この時期に提言をまとめたのは、夏の参議院選挙に向けて、各党からマニフェストが出てくることを意識してのもの。「提言内容が、今の与党の成長戦略やマニフェストといった政策アジェンダの中に記載されることが理想だが、我々の提言を一つの材料に議論が巻き起こって欲しい」と続ける。

 報告書の中で繰り返し強調しているのは、イノベーションの推進のために日本の制度設計全般に見られる事前認可型の政策を改めるべきという主張だ。金准教授は「日本は制度的に“グレイ”の領域は基本的に“黒”、つまり違法という扱いになる。そもそもIT分野のイノベーションは事前に予測が難しい。それにもかかわらずこのような制度設計のままでは、日本は米国をはじめとする海外と比べて圧倒的に不利になる。日本に“フェアユース・スピリット”を根付かせることが最も重要になる」と話す。

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