台湾・台北市で2010年6月1日から5日まで開催中の「COMPUTEX TAIPEI 2010」で、基調講演にIntel副社長のダディー・パルムッター氏が登場。Atom系プロセッサーなどについて語った。
同氏が最初に示したのは「Compute Continuum」という言葉。「計算連続体」とでも言う言葉だが、サーバーからスマートフォンクラスまでをカバーするインテルアーキテクチャーを指す言葉だ。このテーマは、4月にIntelが北京で開催した同氏の基調講演などでも使われており、最近のIntelのキーワードといってもいいかもしれない。
同氏は、現状を概観したあと、各領域について語った。ただ、新情報があったのは、Core iシリーズの「Unlock」(倍率可変)版とAtom系のプロセッサーのみだった。また、次世代マイクロアーキテクチャーとなる「Sanday Bridge」(開発コード名)の動作デモも行った。
Core iシリーズのUnlock版とは、動作周波数の倍率を変えられるようにしたバージョン。通常の製品ではモデルごとに倍率が決められており変えられない。今回発表したUnlock版の「Core i7-875K」「Core i5-655K」はTurbo Boost時の倍率を自由に変更できるようになっており、いわゆるオーバークロック状態で動かせる。Core iシリーズでは、これまで最上位の「Extreme Edition」のみが倍率可変だった。高い周波数で安定して動かすには、マザーボード側や冷却などでの対策やチューニングが必要となる。一般向けというよりは、ゲームなどで一時的に高い性能が必要な分野での利用を想定している。
Atom系のプロセッサーとしては、「Moorestown」などAtom Z6xxシリーズを最初に紹介。今回は、珍しく「Android」が動作するデモを最初に行った。Androidは、アプリケーションをJavaで開発するため、プロセッサーのアーキテクチャーに依存しない。これまでMoorstownでは、Intelが開発にかかわっている「MeeGo」(従来の名称はMobiln)のデモを優先していたが、やや風向きの変化が感じられる。MeeGoは、スレートPC(板状のPC)でデモした。最初からタッチを前提に開発しているMeeGoは、ある意味現在のWindows 7よりは、スレートPCに向いている。
モバイルPC向けのデュアルコアCPUである「Pine Trail」(開発コード名)も紹介した。これを使って作られたレファレンスモデルが「Canoe Lake」(開発コード名)で厚さ14mmのきょう体を実現している。また、PineviewコアでDDR3メモリーに対応したAtom N455、Atom N475の出荷を開始したことも同時に発表した。
パルムッター氏は、次世代プラットフォームとして開発中の「Oak Trail」(開発コード名)の概要も話した。Oak Trailは、PC向けのプラットフォームで、スマートフォン向けのMoorestownのPC版に相当する。Oak Trailでは、現行のPain Trailと比較して消費電力が半分程度になることなどを語った。Atom Zシリーズは軽量のスレートPCが実現可能であることを話し、ゲストとしてAcer社長兼最高経営責任者(CEO)のジャンフランコ・ランチ氏をゲストに招いた。同氏は、開発中の自社のスレートPCをデモ。この分野への期待を語った。
講演の最後、「台湾の友人へ」と題して病気療養中のIntel幹部、ショーン・マローニー氏のビデオメッセージが流された。ダディー・パルムッター氏は、マローニー氏の職務を代行中であり、本来なら、基調講演もマローニー氏が行うべきものだ。長らくIntelのビジネスに携わるマローニー氏だが、予後の元気な姿に拍手が起こり、講演は締めくくられた。