ソニーと凸版印刷、KDDI、朝日新聞社は2010年5月27日、2010年7月1日をめどに、電子書籍配信事業に関する事業企画会社を設立すると発表した(発表資料)。企画会社では、書籍やコミック、雑誌、新聞などを対象としたデジタルコンテンツ向けの共同配信プラットフォームを年内に構築し、運営する方針である。

 記者会見には米国ソニー・エレクトロニクス シニア・バイス・プレジデントの野口不二夫氏と、凸版印刷 取締役 経営企画本部長の前田幸夫氏、KDDI 取締役執行役員常務の高橋誠氏、朝日新聞社 デジタルビジネス担当の和気靖氏が出席した。質疑応答の内容は以下の通りである。

この4社で企画会社を設立するに至った経緯は。

野口 いきなり4社が集まったわけではない。各社が電子書籍事業をどう広げていくかを考えていた中で、いろんな経緯で知りあって話をしたところ、同じ方向を向いていることが分かった。それなら一緒にやった方がより大きなビジネスとして出版社/新聞社をサポートできるし、利用者に提供できるコンテンツも増やせるだろうと判断し、合意に至った。実は話をしていたのはこの4社だけではなく、まだこの場に参列できていない企業もある。まずはこの4社が企画会社を設立してきちっとやるという意思を表明するために、今日こういう場を設定した。

iPadの国内販売前日にプラットフォームの立ち上げを発表した背景には、先行する米国勢に日本勢として対抗する姿勢を示す狙いがあるのか。

野口 世界中で多くの事業者がこの市場に参入しており、予想以上に速いスピードでビジネスが広がっている。ソニーとしてはできるだけ早く日本に参入したいと考えており、その時期がたまたまこのタイミングとなった。iPadに対抗するというよりは、市場が一気に立ち上がる中で参入すべき時期を判断した結果である。

プラットフォームのオープン性を実現するために、4社の競合企業が企画会社に参加する可能性はあるのか。

野口 特定の企業名は出せないが、既にそうした事業者との話し合いを開始している。1業種1事業者と決めているわけではない。同一業種から複数の事業者が参加することはあり得る。同一業種の事業者が直接話すとまとまりにくいこともあるので、そうした事業者の間に立って話を進めていくことも企画会社の大きな役割の一つとなる。

既存のプラットフォームとの違いはどこにあるのか。

前田 出版社側にとって安心してコンテンツを提供できる仕組みを作り、いろんなコンテンツが集まってくるような環境を作りたい。具体的にはこれから検討していきたい。
高橋 配信先を多く確保することが重要だ。配信先としてはソニーの端末もあるだろうし、KDDIの端末もあるだろう。スマートフォンも候補となる。配信先を増やすことでコンテンツを集めやすくなり、それがオープン性を高めることにもつながる。

プラットフォームの運用を年内に開始する計画だが、ソニーは日本で電子書籍端末を発売するのか。また、このプラットフォームがiPadやKindleにコンテンツを提供する可能性はあるか。

野口 年内に電子書籍端末の「Reader」を日本で発売する予定だ。プラットフォームは基本的にはオープンで、提供端末が多いほどコンテンツは集まりやすくなる。iPadやKindleへのコンテンツ提供も否定しない。利用者の選択肢が多くなることはいいことだ。提供端末が多くなることは、出版社も望んでいる。

コンテンツの値付けはどうなるのか。

野口 海外の値付けの仕組みをそのまま持ってくるわけにはいかないと考えている。事業会社と出版社が相談しながら、日本の市場に合った値付けのプロセスを作っていきたい。

今回のプラットフォームを利用する電子書籍ストアは、複数存在し得るのか。

野口 複数のストアを作れる枠組みを作りたい。

ソニーの電子書籍端末「Reader」をこれまで日本で発売しなかった理由は。

野口 コンテンツの数とクオリティーが伴わないと、端末を買ったユーザーに満足してもらえない。コンテンツを届ける仕組みが重要で、単にハードウエアだけがあっても意味がない。これは日本に限らずどの地域についても当てはまる。ソニーは今年日本以外の数カ国でも電子書籍ビジネスに参入する予定だが、いずれもコンテンツパートナーと十分話しをして、きちんとコンテンツを提供できると確認できた国から参入する。