権利者側は反対意見、法制小委で再度ヒヤリング実施へ

 当初案より小幅な内容になったとはいえ、5月21日の著作権分科会では、権利者側の委員からあくまで一般規定に反対する意見が多く出された。大林丈史委員(日本芸能実演家団体協議会 専務理事)は、「権利制限の一般規定は米国のフェアユースや日本版フェアユースのように曖昧な言葉でないことを確認したい」と述べ、米国のフェアユース規定と同様のイメージで適用範囲が広がることに懸念を表明。山浦延夫委員(日本新聞協会 新聞著作権小委員会 委員長)は、「法制小委の議論は導入の必要性があるという前提で進んできている。権利侵害に対する萎縮効果をなくすことが考えられるというが、どういうものなのか。一般規定の導入で経済的利益はどれだけ増えるのか。そうした立法事実に関する議論を、中間まとめ以降にしてほしい」と要望した。瀬尾太一委員(日本写真著作権協会 常務理事)は、「C類型は、新しいネットワークに対応するためこうした制度が必要だという形でまとめられているが、ひとたびタガが外れたときにどうなるか心配である」と語り、C類型の適用範囲をより限定的にすべきとした。

 消費者側の委員からは、「お金を払わずにコンテンツを入手しようとするルール違反者と、いわゆるフェアユース、正当な利用とが一緒くたにされている。フェアユースを導入すると、お金を払わずに入手する人が増えるかのような印象だ。新しいビジネスの活性化という側面もあろうが、消費者にとってコンテンツを使いやすくするということを考えてほしい。コンテンツを全部ガチガチにするのでは、幸せな未来が描けない」(河村真紀子委員=主婦連合会事務局次長)と、エンドユーザーの利便性確保に配慮し、違法行為の取り締まりとともに一般規定の適用条件を緩和すべきとの意見が出された。

 パブリックコメントは6月下旬まで1カ月間募集する予定。その後、権利者側の委員の要望を踏まえて、改めて法制小委で関係者からのヒヤリングを実施する。一般規定の導入の必要性と、導入する場合の適用範囲という2項目について、ネットビジネスを手掛ける企業や権利者団体などの関係者から意見を聞く予定だ。