日本OSS推進フォーラム幹事団・顧問団会合
日本OSS推進フォーラム幹事団・顧問団会合
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日本OSS推進フォーラム体制図(2010年5月時点)
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 日本OSS推進フォーラムは2010年5月19日、幹事団・顧問団会合を開催し、新体制を決定した。代表幹事 矢野薫氏の任期満了にともない、新しい代表幹事に富士通 執行役員副社長の佐相秀幸氏が就任。また新たに「クラウド部会」を新設し、クラウドコンピューティングへのオープンソースソフトウエア(OSS)活用促進を強化する。

 日本OSS推進フォーラムはオープンソースソフトウエアの普及拡大を目的とする産官の団体。IT関連企業が加盟し、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が事務局を務めている。また中国、韓国のOSS推進団体と協力し、日中韓OSS推進フォーラムを開催している。

 新代表幹事の佐相氏は、就任の挨拶で「OSSは単なるソフトウエアではなく、SaaSのようなサービスの基盤、開発に参加することによる人材育成の場、社会インフラとしてのITを実現するためのオープンな公共性を担保するものととらえるべきと考えている。OSSはクラウドの基盤として欠かせない、クラウド時代をけん引する存在になっている」と意気込みを語った。

 日本OSS推進フォーラムは2009年に「クラウド戦略検討チーム」を設置したが、これを「クラウド部会」に昇格する。クラウドコンピューティングを実現するOSSの組み合わせの検証や技術開発、実証実験などを行う。すでにXenやEucalyptusなどの検証に着手している。

 また中長期的なビジョンとして、医療や交通、教育など社会インフラとしてのITを実現する「ソーシャルクラウド」と、その構築基盤である「クラウドファクトリー」を実現するための課題や必要な技術を検討している。

 同じく新設された「クライアント部会」では、クラウド環境に適したOSSクライアントや、OpenOffice.orgなどのオープンな標準に準拠したソフトウエアの普及を促進する。

 「アプリケーション部会」はRuby製アプリケーション「OpenPJC」を開発、2010年3月にOSSとして公開した。組織のプロセスを改善するためのソフトウエアである。2010年の第一四半期には新規アプリケーションを登録する「マスターメンテナンスツール」を公開する予定だ。

 「組み込み部会」では、コミュニティとの共存共栄を目指した、組み込みシステム業界向けガイドラインの作成を行う。また今回、日本OSS推進フォーラムに情報家電メーカーから幹事として、昨年就任したソニー 副会長 中鉢良治氏に加え、パナソニック 取締役 宮部善幸氏が新たに就任した。ソニーおよびパナソニックでは、Linuxを携帯電話や薄型テレビ、ブルーレイレコーダーなど様々な情報家電にOSとして採用している。

 「人材育成部会」ではOSSモデルカリキュラムの作成を行っている。OSSカリキュラムは、OSSを学ぶためのテキストや授業の進め方などをまとめたもので、OSSコースナビとして公開している。今後は中国および韓国とも連携し、普及推進を行う。

 日本OSS推進フォーラムの実際の活動の中枢となるステアリング・コミッティの座長には、NEC プラットフォームビジネスユニット主席主幹 岩岡泰夫氏が就任した。岩岡氏は「OSSの普及という日本OSS推進フォーラムの当初の目標は成功を収めた。ただし、さらに浸透していくべき余地が残っている。具体的には地方への普及などだ」と抱負を語る。

 これまでIPAのサイト内にあった日本OSS推進フォーラムのWebサイトを、5月19日付けで独自サイト「ossforum.jp」に移行した。オープンソースのCMS(コンテンツ管理システム)であるDrupalを採用。情報発信を強化していく方針だ。