日本音楽著作権協会(JASRAC)は2010年5月19日に定例記者会見を開催し、2009年度の使用料徴収額などの報告を行った。2009年度の使用料徴収額は1094億6429万7713円で、前年度比3.1%減となった。市場の縮小などにより、「オーディオディスク」の徴収額が大幅に前年度の実績を下回った。「放送等」や「コマーシャル送信用録音」なども、前年度に比べマイナスとなった。
2009年度の事業報告も行った。理事長の加藤衛氏は「音楽産業が厳しい状況にある中で、どうやって著作権管理事業を遂行するために何が必要かを考えて、それを1年以内に確立していきたい」と述べた。さらに2010年4月1日付けの一般社団法人への移行に伴い、JASRACが「S.Q.N.」の理念に基づいた事業を推進することにしたと発表した。S.Q.N.は、ラテン語の「Sine Qua Non」(シン・クァ・ノン)の略で、「必要不可欠な」を意味する。
理事長の加藤氏らは説明終了後、記者からの質問に答えた。権利者から利用許諾を得ていない「違法コンテンツ」の流通対策に関する質問に対しては、「アップローダーやダウンローダーを一人ひとり追いかけるのでは、いたちごっこになってしまう。一つのヒントになるのは、動画共有サイトの運営事業者の取り組みだ。運営事業者が違法コンテンツをチェックしている。しかし、こうした取り組みが行われるのは一部だけだ」としたうえで、「当分は強い対応を取らざるを得ない」と述べた。
文化庁文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会で検討されている「権利制限の一般規定」(一定の要件を満たす範囲であれば著作物の自由利用を認めるというもの)の導入については、常務理事の菅原瑞夫氏が回答した。導入には、「賛成できない。これまでと基本線は変わっていない」(菅原氏)とした。