日本ケーブルテレビ連盟(CATV連盟)は、2010年3月9日に総務省の政務三役会議で策定された「光の道構想」に関する見解を5月7日に発表した(関連記事)。その背景には、光の道構想を検討する総務省のICTタスクフォースでの議論が、FTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)中心で進みつつある状況への危機感があった。

 光の道構想では(1)アクセス網としての「光の道」の整備、(2)国民の「光の道」へのアクセス権の保障、(3)ICT利活用促進による「豊かな社会」――の実現を目指している。「『光の道』は象徴的な言葉として使っており、回線をFTTHに限定しているわけではない」(内藤正光総務副大臣)という前提で議論が進められたが、一部委員の間には「国策としての方針を決めるのであれば、諸外国の動向も考慮して100Mbps以上の回線を前提とすべき」といった意見もあり、全体的にFTTHありきで議論が進められた感は否めない。

 こうした議論の結果、2010年4月15日に開催されたICTタスクフォースの「過去の競争政策のレビュー部会」と「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」の2部会合同部会で示された「光の道」論点整理案では、検討対象として「BWA」のような無線通信システムが盛り込まれる一方で、「FTTN」(Fiber To The Node)や「HFC」(Hybrid fiber-coaxial)といったCATVの光ハイブリッド網については明確に盛り込まれなかった。

 4月20日、CATVを置き去りにしたまま進められるICTタスクフォースの議論に、CATV最大手ジュピターテレコム(J:COM)の森泉知行代表取締役社長が噛み付いた。事業者ヒアリングで、唯一のCATV関係者としてプレゼンを行った森泉社長は、その冒頭に「光の道構想は議論がFTTHに終始し、CATVが置き去りになっている。非常に遺憾だ」と述べ、ICTタスクフォースの議論を見守るCATV事業者の見解を代弁した。

 4月27日に改めて出された論点整理案では、事業者ヒアリングの意見を反映して、HFCについて「今後の技術革新も考慮すれば、FTTHの代替手段として一定の役割が期待できる」とする一文が盛り込まれた。この一文が盛り込まれたことは、CATV事業者にとって「大きな前進」(CATV連盟)だという。CATV連盟は、新しく論点整理案に盛り込まれたこの一文をさらに後押しすると同時に、CATV事業者がICTタスクフォースでの議論に高い関心を持っていることを示すためにも、今回の見解を発表することにしたという。

 CATV連盟が発表した見解では、大きく「ケーブルテレビの実績と役割の適正な評価」「設備競争の確保」「利用者によるネットワークの自由な選択の確保」「目的に見合った最適な手段の選択」「公平な支援の確保」「現実的な移行方策の検証」の6点について、要望をまとめている。

 このうち「目的に見合った最適な手段の選択」については、「アクセス網の整備と利活用の促進」と「アクセス網を持たない者への設備開放」など複数の目的を同時に達成しようとして議論が錯綜していると指摘した。さらに政策目的と実現手段を整理したうえで、実現可能性や既存のスキームとの比較、国民の負担などの観点から十分な検討を行い、決め打ちではない政策を選択するよう求めた。

<モノ言う団体として光の道構想を注視>

 こうした取り組みの結果、ICTタスクフォースの「光の道」整備の在り方検討作業チームが5月14日に示した「『光の道』構想実現に向けて(基本的方向性)(案)」では、光の道として想定する技術としてFTTHを代表例としながらも、HFCやBWAについて、「光ファイバーが敷設困難な場合などにおいて一定の代替的役割が期待できる」とする一文がさらに盛り込まれた。CATV連盟では引き続き「傍観者ではなく、モノを言う団体」として、光の道の議論を注視する方針である。

■変更履歴
タイトルを一部追加しました。 [2010/5/17 19:15]