写真●「光の道」に向けた報告書案を提出したICTタスクフォースの会合
写真●「光の道」に向けた報告書案を提出したICTタスクフォースの会合
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 総務省は2010年5月14日、グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース(ICTタスクフォース)の「過去の競争政策のレビュー部会」(第1部会)と「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」(第2部会)の第11回合同会合を開催した(写真)。

 両部会はこの日、2015年までにブロードバンドサービスの100%利用を目指す「光の道」構想の実現に向けた報告書案を提出した。注目を集めていたNTTの組織形態については、「検討には十分な時間が必要」とし結論を先送り。1年後をメドに設備のオープン化の進展状況に応じて、再度検討する考えを示した。

二つの方向性で利用率100%を目指す

 報告書案は、2015年までにブロードバンドの利用率100%を目指す「光の道」構想の方向性として、これまでの会合と同様に、(1)インフラ整備率を「90%→100%」にする措置、(2)利用率を「30%→100%」にする措置、の二つの側面に分ける考えを示した(関連記事)。

 (1)のインフラ整備の促進については、従来からの「公設民営方式」の活用に合わせて、不採算地域でも民間事業者の参入を促すために公的支援策も検討する。(2)の利用率を向上する策については、手頃な料金でブロードバンドが利用可能であること、キラーコンテンツやキラーアプリケーションが存在することの2点が重要とした。ブロードバンドの料金を下げるうえでは、「事業者間の一層の競争環境が必要」とする。競争の進展によってサービス価格の低廉化が期待できるからだ。

 4月に開催された事業者に対するヒアリングでは、FTTHで7割近い市場シェアを持つNTT東西に対し、KDDIやソフトバンクなど競合事業者から「公平競争上、問題がある」という指摘が相次いだ(関連記事)。例えば、光ファイバー敷設の際に管路やとう道などを利用しづらいことや、他社の接続情報を自社の顧客獲得のために流用したNTT西日本の不正流用の問題についての指摘だ。

 報告書案でもこのような問題を認識。問題の発端となっているボトルネック設備であるNTT東西のアクセス網の在り方について、機能分離やグループ内分社化、完全分社化などに触れている。

「NTT再編には十分な時間が必要」

 ただしNTTの経営形態を考えるうえでは、(1)国民のアクセス権が問題なく保障されるのか、(2)設備競争とサービス競争を促進できるか、(3)グローバル時代における競争に対応した体制を確保できるのか、(4)NTTの株主の利益が確保されるのか、(5)経営形態変更のための時間とコストなど、多くの要素について検証が必要だとし、当面はNTT東西に対して、「設備の一層の開放や、接続情報のファイアウォールの強化などを求めることが適当」とした。その1年後をメドにNTT東西のアクセス網のオープン化の検討を行い、再度検討する。NTTの経営形態については、実質1年先送りする結論となった。

 ユニバーサルサービス制度についても見直す。現在ユニバーサルサービスは、加入電話、公衆電話、緊急通報を100%の利用を維持するための制度となっている。メタルからFTTHへの移行を加速するために、FTTHを使った「光IP電話」もユニバーサルサービスの対象とする。その後、ブロードバンドの世帯利用率が100%に達した際には、その環境を維持するためにブロードバンドもユニバーサルサービスとして扱う考えだ。

直前まで報告書の内容を調整

 なお報告書案は直前まで内容の調整を進めていたようだ。「最終バージョンができたのは本日午後。最終の一つ前のバージョンができたのは本日の午前中」と、第1部会座長の黒川和美法政大学大学院教授は話す。

 今後報告書案は、総務大臣など政務三役と各部会の座長、副座長で構成する「政策決定プラットフォーム」で最終的な意思決定が図られる見込み。政策決定プラットフォームは週明けの5月18日に開催される。

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