原口一博総務大臣が掲げる「光の道」構想の議論が難航している。総務省は2010年4月27日、グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォースの合同部会を開催した。2015年までに全世帯にブロードバンドを配備する構想の実現に向けて議論したが、その方向性が見えない。構成員からは、3割の利用率を10割に上げるのは無理などと「光の道」の基本理念を疑問視する意見さえ噴出した。原口大臣は5月中旬までに方針をまとめるとしているが、十分な議論を重ねる時間は残されていない。議論するべき課題はまだ多く、無線通信の国際化などを検討する新グループも追加した。

 4月20日に開催された通信事業者などのヒアリングを受けて、作業チームが「光の道」論点整理案の修正点を示した。ブロードバンドの利用率を高めるためには、事業者感の競争を促進して料金を下げるほか、キラーコンテンツが存在するべきと記述した。事業者間の競争条件としては、総合的な市場支配力に着目した規制を検討すること、世帯利用率が100%に満たない場合は、ブロードバンドをユニバーサルサービスの対象として扱うべきではないといった内容を加えた。

 同時に作業チームは、ブロードバンドサービスを普及させるための策として、6月から支給が始まる子供手当てを、エコポイントのようなバウチャー(クーポン)に変更し、電子教科書など子育て関連の通信サービスの利用料として支払えるようにするといった案も出た。

 これらの案に対し構成員が「光の道構想が経済合理性の上で妥当なのかを議論するべき。30%を100%に上げるなど、どうしたら数字を合わせられるか、という方針では議論を矮小化する」と光の道構想の方向性に疑問を呈した。これに対し、作業チームは「超高速のブロードバンドではなく、通常のブロードバンドの範囲内で100%の普及を目指す」と答えた。

 ほかの構成員は「競争により手頃な通信料金にするというのはあり得るが、キラーコンテンツやアプリを政策を出すことはできない。政策としては矛盾する」と見解を示した。作業チームは「諸外国に比べて導入が遅れている電子政府の対応を進める」と応じた。

 このほか、ICTタスクフォース内では「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」が原口大臣の指示により加わった。国際動向を踏まえた無線ブロードバンド通信のための周波数の確保について検討する。5月には第1回会合を開催し、7月に方針を取りまとめる。