富士通元社長の野副州旦氏
富士通元社長の野副州旦氏
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 富士通元社長の野副州旦氏は2010年4月22日、東京都内で会見を開いた(写真)。この場で野副氏は、取締役の地位保全を求める仮処分手続の中で富士通側から提出された録音内容を公開した。昨年9月25日の取締役会前に、野副氏と富士通幹部とのやり取りを、富士通が録音したものである。

 録音には、野副氏が辞任する理由となったファンドの代表者との付き合いについての質問や、野副氏に対して辞任を求める場面が記録されている。野副氏は代表者との付き合いはあくまでも個人的な関係と強調するのに対し、富士通幹部は個人としての付き合いでも、世間からはファンドとの付き合いがあるととられると指摘。「反社会的勢力とのかかわりがある人物、あるいはその疑いがある人物と親密な関係にあるなど、絶対に許されないこと」などとして、野副氏に対して辞任を要求した。

 また、幹部が野副氏に対し辞任を受け入れる際の条件を提示する場面も記録されている。条件として、辞任理由を対外的には病気として発表すること、特例として2010年6月までは同じ月額報酬を支給すること、その後は相談役としての報酬を支払うことなどを提示。同時に、ファンドの関係者との付き合いをやめることや、富士通に対して敵対的行動を取らないことなどを求めた。一方、辞任を受け入れない場合は、取締役会の最初の議題として、代表取締役の解職を決議するとしている。

 野副氏が富士通に対して送付した公開質問状では、10年間の相談役としての地位と約2億7000万円に及ぶ報酬および交際費の支払いを約束されていたとされる(関連記事)。この条件を捨てて辞任の不当性を告発したことについて、野副氏は「(当時は)別の形で会社の発展や成長に対し職務を遂行できると思い、顧問契約にサインした。しかし、実際は相当の制約を受けるために、口止め料的な意味があると思った」と話した。

 野副氏は、「ガバナンスが利いていない経営構造の中で起こったのは事実だと思う」とコメント。事実関係を明らかにし、自身の名誉回復とコーポレートガバナンスのあり方を変えるためにも、外部調査委員会による調査が必要だと改めて強調した。