ケイ・オプティコムと東北インテリジェント通信、北陸通信ネットワーク、エネルギア・コミュニケーションズ、STNet、九州通信ネットワークの電力系通信事業者6社は、2010年4月20日に総務省が開催したICTタスクフォースの2部会合同による事業者ヒアリングの内容を受けて、6社でまとめた提言を説明する記者会見を4月22日に開催した。
挨拶に立ったケイ・オプティコムの久保忠敏常務取締役は、ソフトバンクが事業者ヒアリングで説明した「メタルと同じ1400円で光回線の提供が可能」とする主張に対して、「前提があまりに理想的で、その前提が崩れた場合のリスクが大きい」と懸念を示した。久保常務取締役は続けて「例えばFTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)の償却期間を30年といった長期間で考えているが、これではその間100Mbpsのベストエフォートのサービスを利用し続けることになる。仮に償却前に1Gbpsなどの新しいサービスを提供する場合は新しくインフラ整備が必要で、古いインフラは使われなくなりコスト回収が難しくなる」と問題点を指摘した。
続いてケイ・オプティコム 経営戦略グループの橘俊郎部長は、提言の説明に入る前に「光の道議論の構図は、アクセス網を持つ事業者対持たない事業者」と語り、「NTT対競合事業者」のように構図を単純化した報道が多いことに異論を唱えた。橘氏は、電力系通信事業者は「光の道構想」のコンセプトそのものには賛成しており、実現に向けて最大限努力するとしながらも、その実現方法については「十分な情報開示と国民的合意形成が必要」と説明した。
橘氏は6社共通の考えとして、光の道実現のための検討項目として「公正競争環境の下、民間事業者が設備・サービス両面で競争する必要がある」「条件不利地域などのインフラ未整備地域では、自治体を通じた公的支援を基本に、民間事業者が整備する。整備済みエリアでは利活用の議論が重要」「国の支援を前提とした光回線敷設会社の設立や、FTTHの1分岐貸しは、投資インセンティブを損なうため行うべきでない」「全家庭一斉のFTTH敷設は、使われない設備を大量に作ることになる」「アクセス議論とNTT事業会社統合の議論は別、NTTグループには市場支配力の観点からの規制を検討すべき」――の五つを挙げた。
ソフトバンクやイー・アクセスが支持する「構造分離論」に対しては、「耳障りがよく迫力がある」ものの、「アクセス網を構築していない事業者による机上の議論」とし、具体的に次のような問題点を指摘した。まず構造分離でインフラ整備がスムーズに進むという説明について、「コストやリスクは魔法のように消えない」と反論し、現実には回線を整備しても利用契約が伸びないことで投資回収が不能となったり、加入電話並みという水準ありきの料金設定でインフラ会社が破たんしたりするリスクがあると説明した。
また設備を共用すると、より高速なサービスなど設備と一体で実現する新サービスを提供するためのインセンティブが働かなくなり、利用者の利便性が向上しないという。さらにこれまでにアクセス網を構築してきた経験上の懸念点として、「メタルのように施設設置負担金のないFTTHで、メタル並みの料金をどう実現するのか」「5年で3600万世帯を工事するための工事力をどう確保するのか」「ユーザーの立ち会いが必要な工事を、計画的に一括で進められるか」「既存の設備やサービスが繋がっているメタルの撤去と光の引き込みを、同時に工事できるか」「メタルから光への切り替えに伴い利用中の機器が使えなくなり、結果として国民の私財を無理やり変更させることにならないか」――といった点を指摘した。
最後に電力系通信事業者6社からの提言として、光の道実現には民間事業者による設備・サービス両面の競争が必要であり、条件不利地域に対する残り1割のインフラ整備は自治体を通じた公的支援という現在の政策の延長上で実現が可能だとまとめた。
タイトルで「『NTT対ソフトバンクの構図ではない』、光の道で電力系通信事業者6社が共同会見」としていましたが、より正確な表現に改めるため、「『NTT対競合の構図ではない』、光の道で電力系通信事業者6社が共同会見」に変更しました。また、第3段落でも「『NTT対ソフトバンク』」としていましたが、「『NTT対競合事業者』」に変更しました。 [2010/04/22 21:10]