図1 3DC安全ガイドラインと3D生体影響文献抄録集の位置付け
図1 3DC安全ガイドラインと3D生体影響文献抄録集の位置付け
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写真 映像評価機構 理事長の千葉滋氏(右)と産業技術総合研究所の氏家弘裕氏
写真 映像評価機構 理事長の千葉滋氏(右)と産業技術総合研究所の氏家弘裕氏
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図2 快適3D基盤研究推進委員会などの今後の展開
図2 快適3D基盤研究推進委員会などの今後の展開
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 快適3D基盤研究推進委員会と電子情報技術産業協会(JEITA)、産業技術総合研究所(産総研)、3Dコンソーシアム(3DC)の4団体は2010年4月19日、共同で「3DC安全ガイドライン」(改訂版)と「3D生体影響文献抄録集」を策定したと発表した。JEITAと産総研、3DCのそれぞれのWebサイトで、2010年4月20日より順次公開する。

 メーカーや放送事業者などは、簡単なアンケートに答えることで、誰でもダウンロードできるようにする。3D映像にかかわる事業を手がける企業は、3DC安全ガイドラインや3D生体影響文献抄録集を参考にすることで、3D映像に関する社内ガイドラインの策定を効率的に進めることができる(図1)。

 4団体は2010年4月19日の会見で、3DC安全ガイドラインおよび3D生体影響文献抄録集の主な内容を説明した(写真)。3DC安全ガイドラインは、「視聴者に周知すべきガイドライン」「コンテンツ制作者のためのガイドライン」、「製造者のためのガイドライン」の三つの要素で構成される。このほかに、ガイドラインを活用するための基礎知識も記述した。一方、3D生体影響文献抄録集は、「3D映像特有の視覚疲労」と「映像酔い」の二つからなる。

今後の活動予定などについても述べた。快適3D基盤研究推進委員会は、これらの成果を基に今後も検討を進めて、ISO(国際標準化機構)に2010年度中に国際標準として提案する。3DC安全ガイドラインの英語化なども予定する(図2)。

 会見では記者との間で質疑応答が行われた。撮影、映像制作、表示技術の急速な進歩を受けて、今回の3DC安全ガイドライン改訂で変更を加えた項目を尋ねる質問に対して、カメラ撮影の項目を例として挙げた。「古いガイドラインでは、右目用のカメラと左目用のカメラは左右上下いずれについてもずれがあってはならないと書いていたが、最近は輻輳(ふくそう)を付けても調整することで見やすい映像が作れるようになっているので、変更を加えた。さらにハイビジョン映像が一般的になってきたので、快適視差範囲の項目を書き改めて、今の技術に合わせこんだ」(映像評価機構の理事長で3Dコンソーシアムの安全ガイドライン部会長も務める千葉滋氏)という。

 2010年度中に予定する国際標準に関する提案については、「これから何か行動を起こすという段階ではなくて、既に下地作りが行われている」(産総研 ヒューマンライフテクノロジー研究部門 マルチモダリティ研究グループ長の氏家弘裕氏)と述べた。ISOでは2005年9月に3Dを含む映像の安全性に関するガイドラインが策定されており、その後2006年から2008年にかけて立体を含む映像の生体安全性に関する国際標準化についての議論を国際的に行ってきたという。2009年にレポートがまとまっており、その後に日本は映像の生体安全性に関するガイドラインの国際規格化の提案を行うと宣言した。既に提案の一部を行っており、立体映像に関する提案も2010年度中に行う方針である。