Intelは2010年4月14日、中国・北京市で開催した「Intel Developer Forum(IDF)」の基調講演で組み込み向けのCPU「Tunnel Creek」(開発コード名)を発表。その直後により詳細に解説するセッションを開催した。今回のIDFにおける唯一の「Technology Insight」トラックのセッションである。Tunnel Creekは2010年第4四半期に製品化の計画であるという。チップセットと組み合わせたプラットフォームの開発コード名は「Queens Bay」である。
Queens Bayは、「Menlow」(開発コード名)の反省を生かして作られた製品であるという。設計目標は大きく3つ。(1)プラットフォームの柔軟性、(2)低コスト、(3)性能の確保である。中でも重視したのが(1)だ。
Menlowではチップセットに当たる「System Controller Hub(SCH)」に組み込んでいた機能の多くを、Queens BayではTunnel Creekに統合する。具体的にはグラフィックスコア、ビデオデコーダー/エンコーダー、メモリーコントローラー、ディスプレイコントローラー、HDオーディオ、レガシー系の周辺機器インターフェースである。つまるところほぼパソコンの一通りの機能をワンチップに統合したような姿だ。チップセットに相当するものとして、「I/O Hub(IOH)」を製品化する。IOHとTunnel Creekの間は、PCI Expressで結ぶ。
このような構成は、プラットフォームの柔軟性を実現するためである。従来のMenlowであれば、CPUとチップセットの間は独自のインターフェースであるFSBで接続していた。このため、必ずCPUとSCHの組み合わせが必要となった。しかしTunnel Creekでは、入出力を担うチップセットは必ずしもIntel製品でなくても構わない。業界標準のPCI Expressで接続できるからだ。これにより、機器メーカーは対象とする市場に合わせて独自のI/Oチップを利用できる。例えば車載機器であれば、「CAN」や「FlexRay」など、車載独自のインターフェースに対応する必要がある。公開された標準インターフェース同士なので、Intelでなくても実現が可能だ。さらに、CPUの世代が変わってからも、I/Oチップは継続して利用できるメリットもある。
Tunnel Creekがコスト面で有利なのは、まずチップ数の削減を見込めること。Menlowプラットフォームに基づくIntelの車載システム向けのレファレンスシステムには、SCHのほかにビデオ系のインターフェースを追加する「Timberdale」と車載インターフェースとのブリッジである「Automotive Controller」を盛り込んでいた。Tunnel Creekだと、車載システム向けIOHとTunnel Creekの2つだけで済むようになる。
さらにコスト削減のため、ブートローダー開発キット「Trinity Lake」(開発コード名)も提供する。CPU、メモリー、基本的なI/Oの初期化に特化したもので、機能は低いが安価に実装が可能であるという。
性能に関しては、特に3Dグラフィックスの性能を向上させた。従来の約1.5倍の性能に上げている。そのほかも1.1~1.2倍と全体的に底上げした格好になっている。起動時は、0.5秒以内に初期化を完了し、起動画面を表示できるという。