写真●ICTタスクフォースの会合の様子
写真●ICTタスクフォースの会合の様子
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 総務省は2010年4月15日、グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース(ICTタスクフォース)の「過去の競争政策のレビュー部会」(第1部会)と「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」(第2部会)の第8回合同会合を開催した(写真)。

 2015年までにブロードバンド・サービスを全世帯に普及させるとした原口一博総務大臣の「光の道」構想の実現に向けて、両部会の間には、「光の道」整備の在り方検討作業チームが立ち上がっている(関連記事)。今回の会合では、作業チームの主査を務める相田仁・東京大学大学院工学系研究科教授から、作業チームがまとめた「光の道」論点整理案の報告があった。

 相田教授はまず「光の道」の整備に向けて、(1)利用率を「30%→90%」にする措置、(2)インフラ整備率を「90%→100%」にする措置、の二つの側面に分けて考える方向性を示した。

 (1)は、既に全国90%の世帯において超高速ブロードバンド基盤は整備されているものの利用率が30%超にとどまっている現状を踏まえ、利用率を30%から90%に引き上げる方策。(2)は離島や過疎地など、超高速ブロードバンド基盤が未整備のままとなっている残り10%の世帯のインフラ整備策となる。

 (1)の利用率を「30%→90%」にする措置については、「事業者間で設備競争が進む西日本地区で超高速ブロードバンドの加入率が高い。設備競争の促進による料金の低廉化が利用率向上につながるのではないか」(相田教授)とし、事業者間の競争の一層の促進が有効ではという考えを示した。

 その中で、NTT東西のアクセス網の在り方についても、さらなる公正競争推進のための措置を検討することが必要と指摘した。その一方で論点整理案では、NTT東西のアクセス網を機能分離や構造分離する考えには触れなかった。NTTの経営形態についても「まだ考えが固まっていない」(相田教授)とし、具体案は示さなかった。

 (2)のインフラ整備率を「90%→100%」にする措置については、「一番の基本は民間事業者が競争により整備することが原則。公的主体を用意することは不適当」とし、残り10%の世帯を対象として公設公営で敷設・運用することはありえないとした。ただ長期的には未整備エリアで採算が取れる可能性があるものの、当面は採算が厳しくなる見込みから、一定の公的支援も必要になる考えを示した。また未整備エリアだけで長期的にインフラを維持・運用することが困難であること見込まれるため、「既設のエリアも含めた事業者が整備主体になるのが現実的では」とした。

「光IP電話もユニバーサル・サービスの対象にすべき」

 論点整理案では、「光の道」の定義についても考えを示した。想定するアプリケーションとして考えられる遠隔医療などでHD品質の映像を扱うことから、「まずは下り実効30Mビット/秒以上が適当ではないか。将来的には下り100Mビット/秒に広げたい」とする。光アクセスだけではなく、下り40Mビット/秒程度のモバイルWiMAXなどのBWA(Broadband Wireless Access)もインフラとして考えられると指摘するも、携帯電話は2015年時点のカバー率や安定性の面で不十分とし、超高速ブロードバンドの整備対象とするのは困難との見方も示した。

 ユニバーサル・サービス制度についても考え方を示した。「光の道」実現に向けてメタルから光への移行を加速するために「光IP電話もユニバーサル・サービスの対象とし、基金の活用を図るべきでは」とした。なお「光の道」実現以降は、ブロードバンド・アクセスもユニバーサル・サービスの対象とするべきとした。

 上記のような検討チームの論点整理案について、ICTタスクフォースの構成員の間から「事業者間の競争がきちんと機能していないことがブロードバンド利用率が上がらない最大の要因なのか」という声が相次いだ。相田教授は「ICTタスクフォースの第1部会、第2部会でできるのは競争政策。第3部会(国際競争力強化検討部会)、第4部会(地球的課題検討部会)では制度改正やアプリケーションについて議論を進めており、セットで考えたい」とした。

 NTTの経営形態を含む「光の道」の実現方法については、5月中旬までに方向性を示す計画。次回は4月20日にNTTを含む複数の事業者のヒアリングを行う。

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