日本仮想化技術の宮原徹社長兼CEO
日本仮想化技術の宮原徹社長兼CEO
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 「サーバーの仮想化だけでは数十ものCPUコアを生かせない。使い切るならデスクトップ仮想化が向く」。2010年4月14日、「仮想化フォーラム2010」に登壇した日本仮想化技術の宮原徹社長兼CEOは、ハードウエアの進化が引き起こすトレンドを紹介。12コアOpteronや分散ストレージの検証結果を交えつつ、今後の方向性を語った。

 宮原氏はまず、12個のCPUコアを内蔵するOpteron 6100シリーズの検証結果を提示。6コアのOpteron 2400シリーズとの比較で、「12コアOpteronの方が動作周波数は400MHz低いものの、メモリー・チャネルの帯域が増えているぶんデータベース用途などでは高速。動作周波数だけでは判断できない」とし、アプリケーションに応じたハードウエア選択が重要と語った。

 ストレージは、IOPS(I/O per Second)の検証と耐障害性の向上が鍵とする。IOPSを高める手段としてSSDが注目を集めているが「仮想化環境で万能ではない。各メーカーがアクセラレータとして高速化した企業向けSSDなどを選択肢に入れるべき」(宮原氏)という。ランダム・アクセスが高速なSSD、スケールアウトが可能な分散ストレージ、並列アクセスで高速化したSSDなど、複数のデバイスを必要な性能や用途に応じて選ぶ必要があるとした。

 日本仮想化技術によるベンチマーク・テストでは、ローカルSSD、米Hewlett-Packardの分散ストレージ「LeftHand」(後継はStorageWorks P4000 G2 SAN ソリューション)、米HPの「StorageWorks IOアクセラレータ」の3製品を比較。意外な結果として「LeftHandはネットワーク・レベルのミラーリングが可能なストレージだが、オーバーヘッドは10%程度と少ない。今後は入出力のインタフェースを増やすことで、さらに高速化できるのではないか」(宮原氏)とした。

 CPUやストレージ装置の性能向上を背景に、「デスクトップ仮想化の導入が現実的になってきた」と宮原氏は言う。サーバーより2桁以上台数が多いクライアントの仮想化であれば、CPUリソースを使い切れるうえに1クライアント当たりの仮想化コストを低減できるからだ。宮原氏は「サーバーの仮想化では、物理障害時の影響範囲を見据え、1サーバー機に対して仮想マシンを2つ程度に抑えるケースが多い。だがデスクトップ仮想化であれば、消失したら困るデータはサーバーより少なく、集約度を高めやすいのではないか。仮想デスクトップ内でこまめにファイルをセーブすればカバーできるはず」と見る。

 続いて宮原氏は、画面転送型のデスクトップ仮想化に関するベンチマーク・テストの結果を紹介。「速度面では、画面スクロールを多用する操作でなければ実用上問題ない。ネットワークの面では、画面転送プロトコルで米Citrix SystemsのICAの方が米MicrosoftのRDPより使用帯域が少ない」という。

 とはいえ周辺環境の整備が進んだからといって、デスクトップ仮想化が多くの企業にメリットをもたらすとは限らない。「最後の砦は費用対効果」(宮原氏)だからだ。デスクトップ仮想化は、端末とサーバー、そして場合によってはネットワークの更改が必要。1ユーザー、1クライアント当たりの価格は物理クライアントよりどうしても高くなる。宮原氏は今年1年を「デスクトップ仮想化をユーザーが評価していくフェーズ」として来場者に水を向け、講演を締めくくった。