IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は2010年4月7日、「IT人材白書2010」(以下、白書2010)のポイントを発表した。白書2010はIT企業やユーザー企業、現役IT人材や一般社会人などを対象に、IT人材の動向やオフショア動向について調査した結果をまとめたものだ。サブタイトルは「岐路に立つIT人材 変革期こそ飛躍のチャンス」。IPAの田中 久也理事は、「このサブタイトルには、変革期をポジティブにとらえてほしいという思いを込めた」と語った。

 田中理事は今回の調査で明確になったこととして、「IT人材個人が仕事に持つ不安の原因は、将来の不透明さ」であると指摘した。「業務については前向きであるが、所属する企業の方向性や将来ビジョンが見えないため、自身のキャリアについての見通しが立てにくいと感じているIT人材像」がかいま見える。具体的には、「仕事や職場の環境に対する満足度」という項目において、「休暇の取りやすさ」「職場の雰囲気」「労働時間」「給与・報酬」などよりも下に、「社内での今後のキャリアに対する見通し」という項目がランクインしている。「給与面以外の悩みや問題点」としては「このまま仕事を続けていていいのかどうか不安になる」「将来自分がどうなるのかが見えない」が1位と2位を占めている。

 技術者のキャリア形成の支援についての調査結果も興味深い。「IT人材のキャリア形成の責任の所在はIT人材個人にあるか、それとも企業側にあるか」という意識調査では、個人は企業側にあると考えている割合が多く、企業側は個人にあると考えている割合が多いのだ。そして企業規模が大きくなるほど、「キャリアアップの責任の所在は企業にある」と考えるIT人材個人の割合が多い傾向が見られるとしている。

ビジネスの枠組みでのIT知識と仕事の範囲のIT知識

 このほか白書2010では、IT人材の需給バランスについても言及している。IT企業においてIT人材の量的な不足感は後退しているが、質的な不足感は依然として高い、としている。一方ユーザー企業におけるIT人材需要は、量も質も不足感が強い。

 また、ITをビジネスに生かす幅広い知識やスキルがIT人材に必要とされていることも浮き彫りになった。企業としては、「内部統制・システム監査の重要性に対する理解」や「経営におけるITの重要性に対する理解」をIT人材が持っていることが望ましい知識であるとしている。一方でIT人材は、「表計算ソフトの活用に関する一般的な知識」や「インターネットの仕組みに関する基礎知識」など、現場での個人の仕事に直結するような知識を重視する傾向が見られる。企業側はビジネスという大きな枠組みでITをとらえており、IT人材は仕事の範囲でITを考えているようである。

 以上の調査結果の具体的な数値などについては、下記の「発表資料(PDF)」のリンク先を参照してほしい。今回のポイント紹介は、IPAが2010年5月下旬に予定している白書2010の公開に先立って行った。白書2010の頒布は、IPAのWebサイトからの無償ダウンロードや、印刷・製本版(1冊1000円)で行われる予定だ。

[発表資料(PDF)]