「2015年にすべての小中学生がデジタル教科書を持つ」という政府目標の実現を視野に入れて、民間主導の協議会の設立に向けた準備が進められている。団体名は「デジタル教科書協議会」(仮称)である。

 具体的な活動内容として(1)デジタル教科書の要件の検討、(2)ビジネスモデルや普及方策の検討、(3)実証実験の企画・実施、(4)その他課題の整理・検討、提言──などを想定している。政府(文部科学省や総務省)などと連携して、活動を進めていきたい考えだ。

 デジタル教科書とひと口に言っても、肝心のコンテンツ(教材)がついてこないと意味を持たない。しかし、デジタル教科書の推奨スペックがないと、その肝心のコンテンツの開発も進まない。ハードウエアやソフトウエアの目安がないと、教材として何ができるのかわからないからだ。そうした意味で、推奨スペックについてオープンに議論しながら、政府と連携した形で標準のガイドラインが作成できると、ハードウエア/ソフトウエアとコンテンツの両面から、デジタル教科書を推進する上で大きな意味がありそうだ。

 検討する推奨スペックとして挙がっているキーワードには、ハードウエアの分野では「タブレットPC」や「PDA」あるいは各種の新規端末、ソフトウエアの分野では「ノート」「グラフ」「お絵かき」「音楽」などがある。さらに、コミュニケーションの分野を欠かせず、「通信」や「コミュニティ管理」などもキーワードとして挙がっている。協議会では、こうしたキーワードから推奨スペックを検討し、策定したガイドラインを検証するために数校で実証実験を行うことも想定する。

 デジタル教科書の推進は、「社会」「文化」「経済」の発展に不可欠なのは「人」であるという視点から、最先端のデジタル教育環境を整備しようという試みである。また、IT産業を引き続き成長のエンジンとするという観点からも、教育環境の情報化には意義がありそうだ。

 なお、本誌が入手した資料によると、呼びかけ人には、立命館大学教育開発推進機構教授の陰山英男氏、NPO法人のCANVAS理事長の川原正人氏、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏、慶応義塾大学メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏、マイクロソフト代表執行役の樋口泰行氏、東京学芸大学客員教授の藤原和博氏らの名前が挙がっている模様である。2010年4月に発起人会を結成し、6月に設立総会を開催し、幹事会の元で「スペック委員会」や「普及啓発委員会」など発足させるというスケジュールを想定している。

 その後は、年度内にも実証実験や政策提言を予定する。事務局は融合研究所におくことになる見込みである。